研究課題/領域番号 |
13J10181
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田村 未希 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 哲学 / 解釈学 / 現象学 / ハイデガー / 歴史性 |
研究概要 |
本研究はマルティン・ハイデガーの哲学における「解釈学的方法」について総体的に把握し、現代の解釈学的哲学の諸問題へのハイデガーの立場からのアプローチを示すことを目的としている。1年目となる2013年度は、まず「解釈学的方法」の総体的把握を目標とし研究を行った。この課題を果たすにあたり、(1)解釈学的方法の生成史的研究、(2)解釈学的方法との関連におけるハイデガーの真理論の検討を行った。それぞれの成果は以下である。 (1)解釈学的方法の生成史的研究 : 本年度はまず解釈学的方法を生成史的に跡づけるべく、「宗教現象学入門」講義や「アリストテレスの現象学的解釈」講義を中心とした初期-前期(1919-1927)の講義録を中心に検討し、ハイデガーが方法論形成の過程において見出した諸問題を整理する作業を行った。その結果、彼の哲学の根本的な動機の一つである人間の存在の歴史性を明らかにするという課題を中心に彼の方法論形成の一つの筋道が明らかになった。 (2)解釈学的方法との連関におけるハイデガーの真理論の検討 : ハイデガー独自の「開示性」概念に基づく真理論はトゥーゲントハットらによって批判されているように一見独断的であるが、本研究ではこの真理論がハイデガーの方法論と密接な関係があるという見通しのもと、その動機と哲学的意義について検討を行った。その結果、ハイデガーの基本的発想とは、ただちに認識を求めるよりはむしろ、自分が立脚する立場が前提している事柄に対して遡行的な探究へと繰り返し出発し、そのような前提を吟味・解体することによって、事象の与えられ方により広く可能性を与え返すことであるということが明らかになった。このようなハイデガーの真理論は、認識のため適切な立脚点を探る遡行的探求という点で重要な意味を持っていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、ハイデガーの解釈学的方法の生成が歴史性と関係することを初期講義録に基づきながら明らかにするとともに、解釈学的方法とハイデガー独自の真理論との関わりについても解明の手掛かりを得た。これらの研究成果は、日本語のみならず英語での学術論文や口頭発表として公にされ、中には、日本現象学会での厳密な審査を受け、掲載が認められた論文も含まれている。以上からして、昨年度の研究は、おおむね順調に進展したと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度の研究成果に基づいて、ハイデガーの解釈学的方法とそれに相即する真理論が基づいているところの現存在分析を、改めて方法論との関係から検討する。その上で、ハイデガーの解釈学的方法の意義と射程を正確に見積もるために、ガダマーの解釈学との比較検討を行う。
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