研究課題
土壌や岩石の侵食は地球表層環境において重要な役割を担っている。土壌中に含まれる栄養塩は陸上生命にとって必要不可欠であり、また、海洋への溶存物質の供給は海洋生命圏の維持に必須となっている。本研究課題の目的は地球化学的手法により陸上の侵食速度を定量的に復元し、地球上の物質循環解明の鍵となる侵食速度の制御要因を明らかにすることである。研究対象地域は中低緯度のモンスーン地域および氷床の影響を受ける高緯度地域である。まずモンスーン地域の研究として、急峻地形が分布する中部日本に着目しフィールド調査を行った。段丘地形の調査と試料採取地点の検討行い、川砂試料の採取を行った。また、河道に人為改変が行われる以前の試料として、堆積物コア試料を入手した。次に前処理法の改良により、これまで国内で測定されていた試料よりも同位体比が一桁低い中部日本の試料を測定することが可能となり、分析結果を得ることができた。地球上の侵食過程について評価を行う上で、以上に述べた中低緯度のモンスーン地域と共に重要となるのが高緯度氷床地域である。侵食は化学風化を通じた大気中二酸化炭素濃度とも関連しているため、地球史における造山運動や、気候変動との関連について近年盛んに議論が行われている。そこで本研究ではアラスカ沖にて行われたIODP (Integrated Ocean Drilling Program)第341次航海に参加し、乗船研究を行った。約2ヶ月間にわたる乗船研究とその後テキサスA and M大学で行われた試料分割作業により、次年度に分析する堆積物コアを入手した。
2: おおむね順調に進展している
試料の前処理方法に改良を行い、低濃度の宇宙線照射生成核種を測定することが可能となり、分析結果を得ることができた。結果については国内外の学会にて発表し、投稿論文を査読付き国際誌に投稿中である。またフィールド調査と、IODP (Integrated Ocean Drilling Program)第341次航海への乗船により、次年度に分析する試料も入手している。以上の状況から概ね順調に中期目標を達成していると自己評価できる。
引き続き試料の測定を進めていく予定である。ウラン系列核種を利用した、堆積物の運搬時間の復元については研究に遅れが生じている。そこで宇宙線照射生成核種を複数核種について測定することで, 半減期の違いを利用して堆積物の運搬時間についての補佐的データを得ている。
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Proc. IODP
巻: 341
10.2204/iodp.proc.341.2014
IODP Preliminary Report
10.2204/iodp.pr.341.2013