研究課題
土壌や岩石の侵食は地球表層環境において重要な役割を担っている。土壌中に含まれる栄養塩は陸上生命にとって必要不可欠であり、また海洋への溶存物質の供給は海洋生命圏の維持に必須となっている。本研究課題の目的は地球化学的手法により陸上の侵食速度を定量的に復元し、地球上の物質循環解明の鍵となる侵食速度の制御要因を明らかにすることである。まず昨年度に行なった野外調査にて入手した試料中の宇宙線生成核種の測定を行なった。宇宙線生成核種とは、宇宙線の照射によって岩石中に極微量に生成される核種で、その濃度は照射による生成と、侵食による損失で決定される。したがって核種濃度から侵食速度を求めることが可能である。試料の測定結果は集水域斜面の傾斜角が大きいほど侵食速度が大きいことを示していた。この関係から、中緯度湿潤地域における斜面傾斜角と侵食速度に関する経験式が得られた。また得られた侵食速度は、ダムの堆砂量および熱年代学的手法によって求まった侵食速度と整合的であった。さらに本研究では過去の侵食速度を復元するため、堆積物コア試料中の宇宙線生成核種の測定を行なった。その結果、完新世を通じた侵食速度の履歴を求めることができた。なお、宇宙線照射生成核種の分析では、効率的な石英の抽出とクリーニングが必要である。本年度はケイフッ化水素酸を用いた撹拌溶解手法を改良し、石英の回収率向上に成功した。さらにキャリアとして加えるBe標準溶液に関する検討を行い、同位体比測定のバックグラウンドを一桁低下させた。以上の前処理法の改良により、これまで測定が極めて困難であった低濃度試料を測定することが可能となった。これらの手法開発は宇宙線生成核種を用いた研究分野全体の発展に寄与すると位置づけられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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化石
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