ブドウやワインに豊富に含まれる食品成分の一つであるレスベラトロールは、がん予防効果などの魅力的な生理活性を有している。それ故に、レスベラトロールの標的タンパク質の発見はその作用機序の解明のみならず、新たな創薬標的の発見に繋がることが期待される。本研究は、研究代表者が新規に見出した RBP1 (resveratrol-binding protein 1) のがん予防における機能を解明することを目標としている。 前年度までに、レスベラトロールを前立腺癌細胞株に添加すると RBP1 がプロテアソーム依存的に分解されることを見出した。レスベラトロール添加および RBP1 の発現抑制時に、細胞死を伴う細胞増殖抑制効果がみられ、アポトーシス抑制分子が減少し、発がん促進経路が抑制されることを見出した。RBP1 のタンパク質発現枯渇時にレスベラトロールを添加したところ、レスベラトロールの細胞増殖抑制効果および発がん促進経路の抑制効果が減弱することを見出した。本年度では、レスベラトロール添加および RBP1 の発現抑制時に、発がん促進経路の上流分子の一つが抑制されていることを見出した。Sirtuin 1 阻害剤はRBP1の発現抑制によるがん抑制効果を減弱できなかった。また、phosphodiesterase阻害剤は増殖抑制効果、および発がん促進経路抑制効果を示さなかった。これらの結果から、レスベラトロールは RBP1 を直接標的とし、発がん促進経路の上流分子の一つを抑制することによって抗がん作用を発揮していると考えられる。 本研究により、レスベラトロールの抗がん作用の標的分子として新たにRBP1が見出された。RBP1 を標的とすることはがん予防効果に限らず、レスベラトロールのその他の生理活性にも関与している可能性があり、RBP1 を標的とする薬剤のスクリーニングによりレスベラトロールの生理活性を模倣可能な薬剤の発見が期待できる。
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