研究課題/領域番号 |
13J10283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 俊明 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 赤外線天文学 / 宇宙赤外線背景放射 / 惑星間ダスト / 黄道光 / 星間ダスト / Diffuse Galactic Light / スペクトル観測 / 偏光観測 |
研究概要 |
本研究は初代星の光を観測しその星生成しなどを明らかにすることである。初代星の直接観測は現在の技術では困難であり、初代星を含む系外銀河の光を積分した近赤外線波長領域の宇宙背景放射を観測(CIB)することで初代星の研究をしようと考えている。過去の観測では背景放射のスペクトルピークが波長1um付近に示唆されており、赤方偏移した初代星の紫外線と周りの星間ガスからのLyman-α輝線によるものではないかと考えられてきた。しかし波長1um付近における観測がなかった為、明確な答えは未だ得られていない。 そこで大気光を避けるためロケット実験CIBERを行い、波長1um周辺において背景放射を観測した。CIB観測では前景放射の差し引きが特に重要である。最も明るい前景放射は惑星間ダストにより散乱された太陽光である黄道光で、観測する空の明るさの80%をしめ、CIB観測において最大の系統誤差の要因となっていた。また波長1um付近において星間ダストにより散乱された星の光である銀河内の拡散光はこれまで観測されておらず、CIB観測にどれくらい寄与があるかしられていなかった。前景放射を精度よく分離するために黄道光と銀河内の拡散光を理解することが重要である。 2013年6月にCIBERの第4回目の打ち上げと観測を行った。最高高度550km、観測時間330sの観測を行い、良質なデータを得ることに成功した。この観測結果と過去の観測結果から黄道光の絶対値スペクトルと偏光スペクトルを初めて得た。また星間ダストの空間分布を用いて銀河内拡散光の絶対値スペクトルを初めて得ることに成功した。これらの結果から惑星間ダストと星間ダストの組成やサイズ分布に制限をつけることに成功した。またこれら前景放射を観測値から差し引くことでCIBのスペクトルを得ることができた。現在CIBの観測精度やスペクトルの科学的な解釈について研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、CIBERの第4回目の打ち上げ及び観測を成功させ、前景放射である銀河内の拡散光、黄道光のスペクトルを求めることであった。上記したように、私はこれらの目標を達成した。また、これらの研究成果を国際会議、国内学会で発表することが目標であり、私は平成25年度中に2つの国際会議と1つの国内学会でこれらの研究結果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記のようにして求めた銀河内の拡散光、黄道光のスペクトルを用いてCIBのスペクトルを導出する。また、過去に観測した黄道光の偏光観測などのデータを用いる事で、より精度の高い前景放射の差し引きを目指す。得られたCIBのスペクトルに対して、その起源を考察し、初代星の影響を調べる。最終的に得られた初代性の情報から、宇宙再電離期における星の生成率を明らかにする。 最終的にはこれらの研究結果を論文としてまとめて発表する。
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