研究課題/領域番号 |
13J10301
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
明楽 隆志 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 細胞分裂 / 染色体分配 / チェックポイント / Mad1 / 染色体整列 |
研究概要 |
当初、Mad1のスピンンドルチェックポイント不活性化機構を解析していたが、その過程でMad1のスピンドルチェックポイント以外の重要な機能を発見し追究した。Madlのスピンドルチェックポイント以外の機能はこれまで、いくつかの生物で示唆されていたものの、その具体的なメカニズムは明らかになっていなかった。 私は、分裂酵母Mad1の新規相互作用因子として、Cut7キネシンモーターを同定した。このCut7の分裂期における局在を観察したところ、Mad1同様、微小管未結合の動原体に局在することが分かった。微小管未結合の動原体に局在するキネシンとしては、分裂酵母において初めての発見である。またCut7の動原体局在はMad1に依存していることが分かった。ではCut7は動原体で何をしているのだろうか。そこでCut7が動原体に局在できない変異体において分裂期をライブ観察したところ、染色体整列に異常があることがわかった。以上の結果から、Mad1のスピンドルチェックポイント以外の機能はCut7の動原体局在を介した染色体整列であることが明らかになった。 つぎにMad1染色体整列機能がヒトにおいても保存されているかを、ヒト培養細胞を用いて検討した。そこでMad1をRNAiで発現抑制したところ、染色体整列に異常があることが分かった。ヒトにおいてはCENP-Eキネシンが動原体に局在し染色体整列を促進することが分かっている。そこでMad1のRNAiで細胞を処理したのちCENP-Eキネシンの局在を観察したところ、動原体局在が顕著に減少していることがわかった。 よって、分裂酵母においてもヒトにおいても、Mad1がキネシンを動原体に局在化させることにより染色体整列を促進していることが分かった。CENP-EやMad1の変異はヒトの癌において頻繁に観察される。したがって本研究が癌の治療に活かされることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は想定していなかった発見が複数あり、研究が大きく発展したため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Mad1とCut7の結合には、分裂期特異的な修飾による制御はあるか Mad1とCut7の共局在が細胞内で観察されるのは分裂期だけである。これは、これらの因子の結合が分裂期特異的であることを示唆している。そこで、分裂期特異的キナーゼに焦点を合わせ、Mad1とCut7との結合への寄与を検討する。 (2)ヒトにおいてMad1はどのようにしてCENP-Eを動原体に局在化させているのか ヒトのMad1がCENP-Eの動原体局在に必要であることは、これまでの解析で明らかになったが、どのようにして局在を制御しているかは未知のままである。そこで、Mad1とCENP-Eが結合するかを検討し、局在制御の分子メカニズムに迫る。
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