研究課題/領域番号 |
13J10307
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩木 慎平 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | MRIプローブ / 動脈硬化 / 蛍光 |
研究概要 |
本年度は、まず動脈硬化巣を標的としたMRIプローブの分子設計に着手したのち、プローブの最適化・改良を行うことで動脈硬化巣を可視化するMRIプローブ2BDP3Gdの開発に成功した。 MRIプローブの分子設計において、動脈硬化巣の脂質豊富な「環境」を標的とすることとした。その理由としては、リガンド等に対してMRI造影剤をラベル化する一般的な分子設計と比較して、特定の標的生体分子を持たずに「環境」を標的とすることで標的生体分子の濃度に依存せずに病変へMRIプローブを集積させることが可能となり、動脈硬化巣を高感度に検出できると考えたためである。脂質豊富な環境への親和性が高い構造としては脂質染色に汎用される蛍光色素であるBODIPY (boron dipyrrome thene)に着目し、このBODIPYとMRIシグナルを増大させる構造であるGd^<3+>錯体とを結合させた新規MRIプローブBDP-Gdを分子設計、合成した。動脈硬化モデルマウスであるApoE KOマウスにBDP-Gdを静注後、大動脈を摘出し、BODIPYに由来する蛍光を観察したところ、BDP-Gdは動脈硬化巣選択的に集積していることが明らかとなった。そこで次に、動脈硬化モデルウサギであるWHHLウサギにBDP-Gdを投与し、in vivoにおいてMRIで動脈硬化巣を検出可能か検討した。しかしながら、BDP-Gdを投与しても、動脈硬化巣のMRIシグナルは増大しなかった。そこでより高感度なプローブを開発するためにプローブの最適化・改良を行い、動脈硬化プローブ2BDP3Gdを開発した。2BDP3GdはBDP-Gdと比較して動脈硬化への親和性は維持されており、かつより高感度であることが明らかとなった。そこで、この2BDP3Gdを用いてWHHLウサギのin vivo MRI実験を試みたところ、2BDP3Gdを投与したWHHLウサギの動脈硬化巣のMRIシグナルが時間経過とともに増大していることが明らかとなった。また、MRI実験の後にWHHLウサギの大動脈を摘出して組織切片を作成したところ2BDP3Gdは動脈硬化巣の脂質コアに集積することで動脈硬化巣を可視化していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
動脈硬化を可視化するMRIプローブを分子設計、合成し、なおかつ動脈硬化モデル動物の動脈硬化巣のMRI画像の撮像まで達成している。その過程において、プローブの誘導体化による最適化・改良を行っており、プローブとしての完成度は非常に高い。さらに、すでに開発したプローブを用いて共同研究にも着手しており、当初の想定以上の研究展開を見込むことができる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は2BDP3Gdの更なる有用性を探るべく、抗高脂血症薬を投与した実験動物の動脈硬化巣の縮小を評価できるかの検討や、動脈硬化の破綻しやすさとプローブの集積量との間に相関があるかなどの検討を行っていく。さらに、2BDP3Gdは蛍光性を有していることに着目し、2BDP3Gdの蛍光血管内視鏡による in vivo 動脈硬化イメージングへの応用可能性について検討を進めていく。
|