研究課題/領域番号 |
13J10322
|
研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
黒木 麻湖 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 味覚 / 渋味 / マウス / 後根神経節 / ニワトリ / TRPA1 / TRPV1 / EGCG |
研究概要 |
緑茶はいれて時間が経つと渋くなると言われている。そこで渋味のセンサーのTRPA1及びTRPV1が、酸化したEGCGによって活性化されるか検討を行った。すると非常に興味深いことに、それらのTRPチャネルはEGCGそのものでは活性化されず、酸化EGCGで強い活性化が起きた。そしてEGCGの酸化物の中から、テアシネンシンA (TS-A)がTRPチャネルを活性化させる物質の一つであることを見出した。さらに、TRPA1及びTRPV1が発現しているマウスの後根神経節細胞は、渋味物質の酸化EGCGやTS-Aで活性化しその応答はTRPA1及びTRPV1の特異的な阻害剤(AP-18, CPZ)で抑制された。即ち、渋味物質はこれらのTRPチャネルを介して感覚神経を活性化することが実証された。一方、TRPチャネルは、動物種によって化学物質への感受性や、温度の感受性に違いがあることが多数報告されている。そこで各動物種のTRPチャネルの酸化EGCGへの応答性について検討を行った。その結果、TRPA1については、ほ乳類が酸化EGCGを感知でき、鳥類からは感受性がなくなる。TRPV1は鳥類まで酸化EGCGを感知し、は虫類から応答性がなくなることが判明した。TRPA1はN端側に16個のAnkyrin repeat (AR)とC端側に6回膜貫通ドメイン(TM)をもつ構造をしている。そこでTRPA1をこの2つの部位に分け、酸化EGCG応答性を持つマウスTRPA1と応答性を持たないニワトリTRPA1の間でAR領域とTM領域をスワップし、キメラTRPA1を作成した。その結果、ニワトリTRPA1のTM領域を持つキメラは酸化EGCGに応答せず、マウスTRPA1のTM領域を持つキメラは酸化EGCGに応答した。即ちTRPA1の酸化EGCG感知部位はTM領域にあることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、渋味物質の酸化EGCGとTS-Aで口腔内の感覚神経上に発現するTRPA1とTRPV1が活性化されることを示した。学会報告をすると共に論文投稿(Chem. Senses)し、現在論文はリバイス中で、電気生理実験、変異体実験などが要求されている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、渋味物質がTRPA1とTRPV1を活性化させることを示したが、どのようにして動物が渋味を感じるのかまでは明らかにすることができなかった。今後は、TRPチャネルの酸化EGCG感知部位の特定、さらにマウスを使った個体レベルの渋味回避行動の解析をしていく必要がある。
|