研究課題/領域番号 |
13J10342
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
今井 宏平 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トルコ / 公正発展党 / 全方位外交 / 外交政策 / 国際関係論 / 地域研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2002年から現在(2015年5月)までトルコで単独与党の座に就いている公正発展党の全方位外交の実態解明である。公正発展党の全方位外交の実態を理解するために、本研究では水平的・垂直的な視点から体系的な説明を試みている。水平的な視点とは、トルコと他国の関係だけではなく非政府組織との関係も視野に入れ、トルコをハブとする経済、文化、宗教的な共同空間をあぶり出すことである。垂直的な視点とは、公正発展党の全方位外交とトルコの史的に展開された全方位外交との比較である。 この目的に沿って平成26年度は、主に水平的視野に焦点を当て、冷戦構造崩壊後のトルコの全方位外交、特に公正発展党政権下でのトルコの周辺国地域と国際的政治上の大国に対する「複合的な全方位外交」について考察を行った。「複合的」とは、政府間関係だけではなく、政府と非政府アクターの関係、非政府アクター同士も関係も視野に入れることを意味する。冷戦構造崩壊後から「アラブの春」に至るまでのトルコの全方位外交に関しては、単著『中東秩序をめぐる現代トルコ外交』(研究成果公開促進費・学術図書・265142)で詳しく論じた。また、日本中東学会第30回年次大会で "Turkey's Multi-track Diplomacy during the JDP Era"というトルコの非政府組織の外交に果たす役割について、2014年度世界中東学会では、"A comparative study of Turkey's refugee policies"という公正発展党の難民政策について発表した。 平成26年度においては、単著1冊、論文2本、7回の学会発表を行った。単著はトルコの外交を国際関係論の理論的枠組みから分析した日本で最初の業績である。また、国際学会で5回、国内学会で2回の英語発表を行い、国際的に自己の研究を提示することに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、トルコの全方位外交の具体的な事例、特に公正発展党政権下での政府と非政府組織が連携して展開した外交についての検証を軸に、日本語での単著の出版と国際学会での研究発表の積み重ねを目標に研究活動を実施してきた。そして、単著の出版と5回の国際学会での発表という具体的な成果を残せたので、研究はおおむね順調に進展していると考えている。 研究実績の概要の項目において述べたトルコの全方位外交を検証するための2つの視点である水平的な視点と垂直的な視点のうち、水平的な視点に関しては、この2年間で着実に研究を進めている。その一方で垂直的な視点からの検証はいまだに具体的な研究成果が出せていない。この点は平成27年度の研究の課題の1つとしたい。 文献をはじめとした資料の収集とフィールド調査もこの2年間で着実に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては「現在までの達成度」の中でも触れたように、垂直的な視点に基づく研究である、トルコの全方位外交に関する史的な比較についての研究をこれまで以上に進めていきたい。もちろん、これまで重点的に進めてきた水平的な視点に基づくトルコ外交の研究も同時に進めていく。具体的な成果として、日本語での査読付き学術論文への投稿(『国際政治』と『日本中東学学会年報』)、英語での単著出版、国際・国内学会での発表を念頭に置いて研究を進める。 現時点(2015年5月)で以下の予定が決定している。まず、垂直的な視点からのトルコ外交の検証に関しては、トルコとアルメニアの史的関係についての論文を中央大学社会科学研究所の叢書に執筆することが決定している。水平的な視点からのトルコ外交の検証についてもいくつかの学会発表と論文執筆が決定している。学会発表に関しては、2015年5月16日と17日に開催される日本中東学会第31回年次大会において、非政府組織の中の経済団体のトルコ外交における貢献について発表(日本語)する予定である。また、同年8月3日から8日にかけて幕張で開催される国際学会、国際中欧・東欧研究協議会において"Turkey's proactive policy toward the Balkan region during the JDP era"という題で発表(英語)を行うことが決定している。そして、トルコの地域安全保障に関して、セキュリティ・ガバナンスという概念を用いて分析した論文を立命館大学人文研究所紀要に執筆する予定である。
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