研究課題/領域番号 |
13J10357
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 雄介 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | RNA修飾 / tRNA / wobble位 / 翻訳 / 大腸菌 / uridine-5-oxyacetic acid / メチル化 / 質量分析法 |
研究概要 |
転移RNA (tRNA)は遺伝子発現において重要な、翻訳のアダプター分子である。tRNAはtRNA修飾酵素によって、様々な化学修飾を施され、機能を微調整されている。大腸菌tRNAの34位(wobble位)に見られる修飾塩基5-メトキシカルボキシルウリジン(cmo^5U)及びそのメチルエステル(mcmo^5U)はコドン拡張の機能を持ち、翻訳に影響を与える修飾塩基である。cmo^5U/mcmo^5Uは複数の遺伝子が関わる多段階反応によって生合成される事がわかっているが、反応機構には未解明な点が多い。本研究の目的はcmo^5U/mcmo^5U生合成の初段階であるウリジンの5位のヒドロキシル化の生合成機構を明らかにすることである。 初年度である2013年度は、ヒドロキシル化修飾を担う遺伝子やヒドロキシル基を与える基質など、修飾に必要な因子を生化学的な手法で探索するための実験系を確立し、発見した諸因子の生化学的な機能解析を行う予定であった。しかし、研究の過程でcmo^5U/mcmo^5U生合成に関連する遺伝子の発見が相次いだ事から、それら新規遺伝子の機能解析に重点を置いて研究を進めた。 その結果、 1 当初の研究目標であるウリジンのヒドロキシル化については、2つの遺伝子を同定した。 2 cmo^5Uからmcmo^5Uに至るメチル化については、遺伝子を1つ同定し、試験管内での修飾再構成に成功した。その成果は、2014年度中に論文や国際学会で発表する予定である。 修飾塩基の生合成には新規遺伝子だけでなく、未知の代謝物が働いている場合がある。2013年度にも、正にcmo^5U/mcmo^5U生合成の中間部分の反応を担う基質として、新規の代謝物が大々的に発表されたばかりだ。今後1を追究する事で、cmo^5U/mcmo^5U生合成の最後の未解明部分を明らかにし、新たなヒドロキシル化機構を発見する事を期待している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時点より、研究対象近傍の新規遺伝子を2つ同定し、特にメチル化遺伝子については論文発表直前の段階まで進んでいるため。一方で、当初目標としたウリジンのヒドロキシル化反応の生化学的解析については難航しているためその分を差し引いて評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
9及び11で述べた通り、新規遺伝子の発見に伴い、研究開始段階の生化学的解析中心の研究計画を変更して、新規遺伝子の機能解析に重点を置いて研究をすすめている。今後、メチル化遺伝子については論文発表に必要な追加データの収集を行い、論文発表を行う。ヒドロキシル化遺伝子については、生化学的な解析を進める方針である。 現時点の課題としては ヒドロキシル化遺伝子について、試験管内での生化学的な機能解析が難航している点が挙げられる。 対応策として、まずは更なる条件検討や文献探索を行い、生化学的解析が行えるように実験を重ねる。一方で、試験管内解析にこだわらず、逆遺伝学的手法を用いた生体内実験によって反応機構を明らかにするアプローチも並行して進める。
|