研究課題/領域番号 |
13J10370
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
冨田 拓哉 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Sirt1 / ユビキチン / プロテアソーム / Hsp70 / タンパク質品質管理 |
研究実績の概要 |
今年度はSirt1欠損がタンパク質の品質管理機構に及ぼす影響をより包括的に見出すことを目指して研究を実施した。 まずSirt1欠損MEF細胞におけるタンパク質がストレスにより変性を受けやすいかを検証した。野生型MEF細胞及びSirt1欠損MEF細胞に熱ショックをかけ細胞内のタンパク質を変性させると、Sirt1欠損MEF細胞においても野生型MEF細胞と同様にHsp70が誘導されたが、ユビキチン化されたタンパク質はより多く蓄積した。このことからSirt1はHsp70非依存的な経路においてもタンパク質の品質管理を担っていることが示唆された。 さらにSirt1欠損 マウスを用いて同様に熱ショックに対する応答を観察した。Sirt1を欠損した肺では通常時においても熱ショックをかけた後においてもユビキチン化タンパク質の蓄積がより多く見られたが、肝臓では明確な蓄積の差は観察できなかった。これはこのノックアウトマウスの系統において、肺には異常が観察された一方で肝臓には見られなかったという先行研究の知見と整合性が取れていると考えられる。またこの実験系では、肺・肝臓のどちらも熱ショック後の回復期においてSirt1欠損臓器の方がHsp70を顕著に誘導していた。これにより、Sirt1欠損の臓器では元よりタンパク質品質管理機構の機能が低く、熱ショックによって更なる機能の低下を防ぐためにHsp70を強く誘導する代償的な機構がはたらいていることが示唆された。 以上のように、Sirt1欠損はHsp70依存的・非依存的な両経路を介してタンパク質品質管理機構の異常を招くことを、細胞レベル及び臓器レベルで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題に対する成果を論文としてまとめるに十分なデータが揃い、執筆・投稿の段階までたどり着くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
Sirt1欠損の臓器においてHsp70が強く誘導される理由を探るため、Sirt1欠損マウスにどのようにタンパク質品質管理の異常が起きているのかを検証する。 また、本研究計画の最終年度を迎えるにあたり、論文の投稿・改訂を経て年度内の掲載できるようにする。
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