研究課題/領域番号 |
13J10373
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
高嶋 由布子 東京学芸大学, 国際教育センター, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2017-03-31
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キーワード | 日本手話 / 空間表現 / 心理言語学 / 視点 / 第二言語習得 / 認知言語学 / ジェスチャー / 言語発達 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本手話と日本語を比較することで,音声言語とそれに伴うジェスチャー,視覚=空間言語である手話の空間利用の仕方を比べ,言語メディア(音声,空間)によるコード化可能性の共通点と相違点について明らかにすることを目的としている. 今年度はまず,これまでの研究の蓄積のあるアメリカ手話と比べた日本手話の特徴を抽出するため,アメリカでフィールドワークを行うとともに,カリフォルニア大学サンディエゴ校のCarol Padden研究室などで在外研究を行い,最先端の知見を得るとともに日本手話の特徴を考察した. また,前年度における実験で得た,手話言語での心理言語学的な実験を行った際に明らかになった,音声言語とはメディアが違うことや社会的な地位が違うことなどで起こった問題についてまとめて発表した. 言語における空間利用,類像性の利用に着目し,日本手話と日本語の空間表現を含む談話を分析した.前年度までに集めたデータを,日本手話を第一言語とする複数のろう者のコンサルタントと,日本手話と日本語のあいだをとりもつ手話通訳士とともに,言語・談話分析に使われてきたソフトウェアELANを使ってアノテーションを施す方法を模索し,アノテーション付きのコーパスを作成した. このデータから,子供の手話談話の特徴を大人の手話と比べた結果を国際会議で報告した.大人の手話では,登場人物視点を切り替えながら談話を構成するのに対し,子供の手話では観察者視点が混じることが観察された.従来の音声言語に伴うジェスチャーの研究では子供の取りやすいジェスチャーの視点は登場人物視点とされているため,さらなる検討が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していたアノテーション作業が,想定以上に時間と人手がかかることが判明したため,また,日本手話の先行研究が限られているため,観測した現象に関わる要因が多岐にわたり,必要な知見を取り入れるために時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で,アノテーションが必要な要素が複数あり,また,確実性を担保するために複数人での確認が必要など,時間がかかることが明らかになった.このため,さらに人手を増やし,アノテーション作業を確実に行うことで,今後の研究にも使える手話のデータを整える.また,データ作成の知見を後進の人とも共有し,これからの手話研究に役立つ知見を提供する. これまで,言語学的知識を共有するために時間を割いてきた,日本手話を第一言語とするろう者の研究協力者とともに研究を進めることで,言語使用者の感覚に即した分析を推進する.
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