研究実績の概要 |
本年度は, 四つの異なる研究テーマにおいて研究成果を得た. この内, 三つは前年度から継続した研究であり, 残りの一つは今年度からの新しい研究テーマである. 第一は, 計算可能性理論において現在盛んに研究されているランダムネスに関するもので, 様々に提案されてきたランダムネスの諸概念間の関係を調べた. 実施計画通り, 6月にシンガポールにおいて, 一月近くAlgorithmic RandomnessのWorkshopに参加し, また, 9月にはランダムネスの国際会議ARAに参加したことで, 大いに研究が進んだ. 第二に次数構造の順序次元の研究である. 研究の目的に挙げていた, 次数構造の順序次元の特定を目指して, 上記のWorkshopにおいて新たに知った次数構造同士の埋め込みの関係などを使って, 幾つかの次数構造の順序次元に関する事実を明らかにし, 7月のウィーンでの国際会議Logic Colloquiumにおいて成果を発表した. 第三は計算可能モデルとその上の同値関係に関するライス性という概念を新たに導入し, 従来の結果の統合と拡張を得た. ライス性を持つ条件を次数の概念を用いて特徴付けることに成功し, また, 研究目的に挙げていた通り, Π01クラスの次数の代表系として論理上で自然に定義される代表系を発見した. この研究の成果は5月に東京工業大学において開催されたSLACSと超準解析学会において発表した. 最後に新しいテーマとして反映原理を根本的な原理の一つとした集合論の諸形式体系の構築とその研究を開始し, その研究成果を3月に明治大学において開催された日本数学会年会において発表した. また, 研究の目的の一つであった翻訳可能性の研究については, 大きな成果を挙げることはできなかったものの, この研究に結びつくであろう色々な研究の情報を集めた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として, まず, ライス性, および, ランダムネスのこれまでの研究成果を論文としてまとめ発表することを目指す. また, 順序次元の特定を目指した研究, 翻訳可能性の次数構造の研究, 集合論の研究をさらに推し進める.
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