研究課題
申請した研究手法の3つの柱, 1)アステ望遠鏡搭載の新カメラによるサブミリ波マップの拡大, 2)アルマ望遠鏡による観測と可視・赤外データによる赤方偏移分布の拡張, 3)アルマの分光観測による赤方偏移の確定のうち2)と3)について大きく且つ確実な進展を得ることができた。まず研究手法2に関して、申請時の予定の通りアルマ望遠鏡の時間を獲得し年度内に有望な赤方偏移~6候補の波長1100μm-selectのサブミリ波銀河30個について、波長1100μmでの高空間分解能画像を得ることができた。その結果、今まではその正体を知ることができなかった電波や波長100~500μmで暗いサブミリ波銀河について可視・赤外での対応天体を確認することができた。これにより半分以上の(~55%)のターゲットが確かに少なくとも赤方偏移4~5以上にいるであろうことが判明した。これは本研究課題での前提としている「波長450μmなどの短いサブミリ波で暗く波長1100μmでは明るい銀河種族は赤方偏移6などの遠方を狙うのに適した種族である」仮定を支持する結果となっている。研究手法3に関して、残念ながら申請者はアルマ望遠鏡での分光観測の観測時間を獲得するに至らなかった。しかしながら申請者は本研究の赤方偏移6付近でのサブミリ波銀河の赤方偏移同定の分光観測により最適な手法[CII]輝線を用いた手法を新たに開発し、米国サブミリ波干渉計(SMA)で有望天体の一つでその観測を実行することができた。結果赤方偏移5.7付近に有望な輝線を得ることができた。申請時では赤方偏移5.3を超えれば最遠方サブミリ波銀河であったのでより宇宙再電離期に近いサブミリ波銀河を探すという目標は達成されたといえる。これらの結果は申請時の研究方針が有望であることを支持しており、今後研究を進める上で重要な基盤となる。なお研究手法1に関しては新カメラの開発が遅れているため実行することができなかった。
2: おおむね順調に進展している
本研究全体において最も重要な点である再電離期のサブミリ波銀河の可能性が高い天体についてアルマ望遠鏡のデータを得ることができ、アルマなしには検証できなかった「100-500μmで暗い1100μm-selectedの銀河は高赤方偏移にいると考えられる」という仮説を正しいということを得られたことが大きい。また、再電離期のサブミリ波銀河の赤方偏移同定の手法についても目処がつけられた。これらの点より研究初年度として十分な結果を出していると考える。
本研究最終年度である次年度では一年目に得ることができたアルマ望遠鏡のデータを論文化することを最優先事項にあげたい。なお初年度においてアルマ望遠鏡を用いた3プロジェクトを申請者がPIとして観測が実行されており、これらのデータから4本は論文を書ける見込みである。また本研究の要の一つである再電離期のサブミリ波銀河候補の多波長データを用いた赤方偏移の推定や他研究の推進にあたり、欧州の連合研究機関である南ヨーロッパ天文台(ESO)のドイツにある本部にVisiting Scientistとして1年間滞在し欧州のグループとの連携をはかる。
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Astronomical Society of the Pacific Conference Series
巻: 476 ページ: 265-268