本年度は、昨年度単離を行った腸管内の常在性細菌及びその菌に感染する腸内常在性バクテリオファージを用いて、それらの混在によってin vitroで免疫細胞に対してどのような遺伝子誘導を引き起こし、in vivoでどのような生理現象を引き起こされるか明らかにすることを目的に実験を行った。 まず昨年度マウス腸管内内容物から単離した菌についてPCR法を用い菌種同定を行ったところ、この菌が腸球菌の一種(En.)であること、またファージについて全ゲノムシークエンス解析を行ったところ、新規ファージ(E.ファージ)であることが明らかとなった。 次にin vitroの検討として、qRT-PCR法を用い解析を行った。Raw細胞をEn.及びE.ファージで刺激したところ、En.単独刺激と比較して、IL-6の遺伝子誘導が約5倍増強されることが明らかとなった。一般的にファージが宿主菌に感染すると溶菌が引き起こされることが知られていた為、このRaw細胞をEn.及び溶菌を引き起こす抗生物質を用いて刺激したところ、E.ファージを用いた検討と同様に、En.単独刺激と比較して、約4倍IL-6の遺伝子誘導が増強された。一方、溶菌を引き起こさない抗生物質を用いた検討ではIL-6の遺伝子誘導の増強は全く見られなかった。これらの検討から、En.の溶菌によって免疫細胞からIL-6の遺伝子誘導が引き起こされることが示された。 さらにin vivoの検討としてDSS誘導性大腸炎を引き起こしたマウスにおいてE.ファージを投与したところ、E.ファージを投与した群ではcontrol群と比較してDSS誘導性大腸炎に対し感受性を示すことが明らかとなった。この結果について、IL-6はDSS誘導性大腸炎の増悪因子であることから、En.の溶菌により腸管内免疫細胞からIL-6の遺伝子誘導が強く引き起こされた為ではないかと考えられる。
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