研究概要 |
【研究の背景と目的】 動物の体内には傷害を受けたり成長の過程で不要になった細胞が死に, 取り除かれる機構が備わっている. この細胞死機構(アポトーシスと呼ばれる)の不調は癌や神経変性疾患, 自己免疫疾患などの重篤な疾病を引き起こすため, その機構の解明は基礎研究のみならず臨床的観点からも極めて重要である. これまでに細胞内小器官ミトコンドリア外膜上でBakタンパク質が凝集体を形成することがアポトーシスの引き金となることが知られていたが, 凝集体のサイズが光学顕微鏡の分解能の限界(光学限界 : 約300nm)より小さいことから, これまで正確なサイズや局在の評価が困難だった. そこで本研究では, Bak凝集体の可視化検出およびサイズ評価を可能にする新規分析法の開発を目的とした. 【実験結果と総括】 (1)凝集体プローブ発現細胞(stable cell line)の確立 (2)凝集体プローブの特異性の検証 (3)凝集体の超解像可視化検出 (4)凝集体のサイズ評価 本研究では, 超解像可視化技術と内在性標的遺伝子欠損細胞を用いることでBak凝集体の超解像可視化検出およびサイズ評価を可能にする新規分析法を開発した. 本分析法はこれまで詳細が不明だったBak凝集体のサイズ(直径および分子数)を世界に先駆けて明らかにした. タンパク質の凝集体形成は細胞死だけでなくウイルス感染や菌の走性、免疫反応の活性化など多くの細胞内現象で重要な役割を果たしている. 本分析法は一般的なタンパク質凝集体評価法として広範に応用可能である.
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