研究課題/領域番号 |
13J10439
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
原 弘真 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 凍結乾燥 / コラプス / 最大凍結濃縮相ガラス転移温度 / ガラス化保存 / 星状体 / ROCK阻害剤(Y-27632) / 回復培養 |
研究概要 |
まず精子の凍結乾燥に関する研究において、これまで我々が使用してきた凍結乾燥条件(ラットにおいて産仔作出に成功)では、凍結乾燥サンプルの構造崩壊である「コラプス」と呼ばれる現象が生じていることが分かった。本研究では、このコラプスがウシ精子の発生能に与える影響にっいて調べた。コラプスは、乾燥時の温度を精子懸濁液の最大凍結濃縮相ガラス転移温度(Tg')よりも低い温度に抑えることでその形成が抑制されることが知られているが、示差走査熱量計測定により精子懸濁液の作製に広く用いられているEGTAバッファーのTg'は−45℃という非常に低い温度であることがわかった。そこでEGTAバッファーからNaClを除去し、さらにトレハロースを添加することでTg'を−28℃に上昇させることに成功した。精子を懸濁したこの修正EGTAバッファーを予備凍結した後に−30℃で乾燥したところ、コラプスの形成が抑制されることが確認できた。復水後に得られた精子の発生能をICSIにより調べたところ、コラプスが形成された0および−15℃で乾燥した場合と比べて高い胚盤胞発生率が得られた。以上の結果から、コラプス形成を抑制することで凍結乾燥精子の発生能を改善できる可能性が示された。 続いて卵子のガラス化保存に関する研究においては、近年我々が報告した、ウシガラス化卵子で多発する星状体形成異常を改善することで、その発生能を改善することを目指した。ガラス化卵子の回復培養培地に10μMROCK阻害剤を添加して2時間培養した後に体外受精を行ったところ、星状体が複数形成されてしまう異常を示す前核期卵の割合が有意に低下した。さらに胚盤胞発生率について調べたところ、その値が無添加対照区と比べて高い値を示した。以上の結果から、ROCK阻害剤処理により星状体形成を正常化することで、ガラス化ウシ卵子の発生能が改善されることが明らかとなった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウシ精子の凍結乾燥ならびにウシ卵子のガラス化保存の両テーマともに、保存後の胚盤胞発生能を改善することができた。現在までにこれらの研究結果を用いて執筆した学術論文がそれぞれ受理ならびに掲載に至っており、初年度としては十分な進度で研究が進展していると考えている。しかし、新鮮対照区と比べると未だ発生成績が劣っていることから、更なる技術改善が必要だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の結果から、ガラス化卵子の回復培養工程がその後の胚発生に重要であることが明らかとなった。そこで平成26年度は、このガラス化加温後の回復培養に着目して研究を実施していく。ガラス化卵子では、ガラス化による強い酸化ストレスが加わることで細胞質内のH_20_2濃度が上昇することが知られている。そこで様々な抗酸化剤を回復培養培地に添加し、ガラス化卵子の発生能が改善する添加剤を決定する。さらに、抗酸化剤はROCK阻害剤とは異なる経路でガラス化卵子の発生能を改善すると考えられるため、この抗酸化剤とROCK阻害剤を混合して回復培養培地に添加することで、相乗効果による大幅なウシガラス化卵子の発生能改善を目指す。
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