研究課題/領域番号 |
13J10444
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
野村 真理子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 活動銀河核 / ブラックホール / 降着円盤 / アウトフロー / 天文学 |
研究概要 |
本研究の目的は輻射流体シミュレーションを用いて活動銀河核(AGN)におけるアウトフローの加速メカニズム及び構造を調査し吸収線の起源を解明することである。 近年一部のAGNの輻射スペクトルに金属元素による青方偏移した吸収線が発見され、アウトフローの存在が示唆された。中でもUltra-fast outflow (UFO)は質量放出率、エネルギー放出率が大きいため、AGN中心の巨大ブラックホールの成長過程や母銀河の星形成に影響を与える可能性があり、非常に注目されている。しかしながらアウトフローの正体は未解明である。現在有力なモデルがラインフォース駆動型円盤風モデルである。これはブラックホールをとりまくガス円盤表面の金属元素がUV光を束縛・束縛遷移吸収するときに受ける力(ラインフォース)で噴出する円盤風であり、アウトフローの電離状態と加速を同時に説明できる。本研究はこのモデルに着目している。 今年度は自作の輻射輸送コード(Nomura et al. 2013)を流体計算コード(Takahashi & Ohsuga 2013)にこ組み込み、2次元輻射流体シミュレーションを実行し円盤風の噴出メカニズムと構造を調査した。そして、シミュレーション結果から得られた電離度、柱密度、速度をUFOのX線観測と比較した。 その結果、ラインフォースによって円盤風が噴出し、その円盤風は極角70度付近から観測した場合に、UFOの特徴を再現することがわかった。ラインフォース駆動型円盤風モデルはこれまでの先攻研究ではUFOに適用されておらず、この結果は本研究によって得られた重要な知見である。加えて、広いパラメータ領域でシミュレーションを実行することで初めて、UFOの検出の有無は観測角度のみならず、円盤光度およびブラックホール質量に依存することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成25年度内に行う計画であった3次元輻射流体シミュレーションは現時点ではテスト計算段階である。しかしながらその前段階である2次元計算において広いパラメータ領域での計算を行いUFOの観測との比較を行うことで、アウトフローの起源の解明という大きな目標にせまる重要な知見が得られた。研究の大きな流れとしては順調に進んでおり、今後の研究の準備がかなり進んだ段階にあるため、達成度を②とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究実績で述べたシミュレーションを3次元に拡張し円盤風の非軸対称性、分裂を含むより現実的な構造を調査する。計算コードのベ一スとなる流体計算コードはもとから3次元を想定して開発されており、3次元への発展は容易である。既にテスト計算も行っている。また2次元輻射流体シミュレーションの結果を元に幅射スペクトルを理論的に計算し、観測結果との直接比較を行う。この計画に関しても、国立天文台の吉田鉄生氏を中心に共同研究者と共にCloudy(光電離プラズマ解析の公開コード)を用いたテスト計算を行うなど、準備を進めている。
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