1.前年度までに酸化還元状態とDNA量を調べた、日本海の表層堆積物試料について、次世代シーケンサーを用いて18S rRNA遺伝子の配列決定を行った。また、生物情報学ソフトウェア(MothurとARB)を使用できる計算機環境を整備し、それらのソフトウェアを用いて、配列データから真核生物の群集組成を明らかにした。その結果、群集組成は、堆積物の酸化還元状態によって異なり、DNAの保存に酸化還元状態が影響していることが示唆された。浅部と深部との比較によって、堆積物中でDNAが比較的残存しやすい生物グループを特定した。また、堆積物試料中の有機炭素・窒素の濃度や安定同位体組成を、元素分析計-同位体比質量分析計を用いて測定した。 2.海洋環境試料中に含まれるアミノ酸の立体異性体比(D/L比)を精度良く測定する手法を確立し、北太平洋ハワイ沖と米国カリフォルニア沖の懸濁態有機物・溶存態有機物試料に適用した。水深や季節、有機物の放射性炭素年代によって、様々なアミノ酸に関してD/L比の変動が見られ、バクテリアの寄与などの推定を行った。 3.北太平洋ハワイ沖の懸濁態有機物・溶存態有機物試料について、アミノ酸窒素同位体組成(起源生物や微生物分解の指標)を分析した。その結果、海洋表層および海洋中深層の溶存態有機窒素の起源は、ともに従属栄養バクテリアが主であることが明らかになった。特に、海洋表層の溶存態有機窒素は主に硝酸塩を窒素源に生成されている可能性、海洋中深層の溶存態有機窒素は中深層の懸濁態有機物から生成されている可能性が、それぞれ示唆された。
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