研究課題
クマムシは周囲の環境が乾燥すると、水分量約3%の無代謝状態になり乾燥に耐える。このような乾燥耐性機構の解明は細胞などの長期保存法の開発に有用と考えられるが、その全貌は明らかではない。そこで私はDNAや生体膜をもつミトコンドリアを耐性モデルとして、乾燥耐性に関わるタンパク質の同定をトランスクリプトームおよびプロテオームの2つのアプローチから試みた。クマムシの核ゲノムには耐性に関わると考えられる新規遺伝子が大量に見出される一方で、ミトコンドリアゲノムには新規遺伝子は見出されなかった。また、乾燥による遺伝子発現誘導も見出されない。このことからミトコンドリアの耐性は核ゲノムコードの常時発現遺伝子が基盤となっていると考えられた。そこでクマムシのトランスクリプトームデータにおいて高発現量の遺伝子に着目し、GFP融合タンパク質を用いた細胞内局在解析によりミトコンドリアに局在する2種類の新規遺伝子産物を同定した。このうちの1種類は、熱処理によって凝集沈殿しない「熱可溶性」という性質をもつことを示した。さらに、このタンパク質を導入することでヒト培養細胞の高浸透圧耐性が向上することを示した。また、ミトコンドリアにおける乾燥耐性タンパク質を網羅的に探索するため、クマムシから分離したミトコンドリア分画とクマムシ個体の破砕液におけるショットガンプロテオミクスによりタンパク質の網羅的な同定をおこなった。クマムシ破砕液とのペプチド検出数の比較により、ミトコンドリア分画に濃縮されたタンパク質を844種類同定した。乾燥耐性に関わることが期待されるクマムシ固有のタンパク質は130種類同定されていた。クマムシ固有のタンパク質について、GFP融合タンパク質を用いた細胞内局在解析をおこなったところ、ミトコンドリアに局在する性質をもつタンパク質が9種類見出された。これらはクマムシの耐性を解析する上でよい候補タンパク質と考えられる
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0118272
10.1371/journal.pone.0118272