研究概要 |
本研究は, ハロゲン原子(塩素, 臭素, およびヨウ素)を導入したジアロイルメタナートボロンジフロリド誘導体1a-cBF_2を新規合成し, ハロゲン原子の内部および外部重原子効果によって, 新規常温燐光材料を創成することを目的としている. 平成25年度では, 申請書に従い研究を遂行し, 以下の三点を達成した. ①ハロゲン原子置換体1a-cBF_2の新規合成 新規合成した、1a-cBF_2を核磁気共鳴, 元素分析等によって同定し, 純度を確認した. また, 来年度の目標であった1a-cBF_2の結晶構造解析にも成功した. ②溶液中における1a-cBF_2の発光特性に対する内部重原子効果および外部重原子効果の評価 n-BuCI溶液中における1a-cBF_2は常温で蛍光のみを示した. 一方, その溶液を低温にすることで, よりヨウ素原子を有する1cBF_2は蛍光に加えて, 長波長領域に燐光を示した. このことから1BF_2の発光特性に内部重原子効果が顕著に働くことがわかった. さらに, n-BuCl裏溶液中に重原子(CH_3I)を添加すると1a, bBF_2も低温下で燐光を示した, このことから外部原子効果が1BF_2の発光特性に顕著に働くことを明らかにした. ③結晶状態における1a-cBF_2の発光特性の評価 燐光スペクトル測定, 燐光寿命測定の結果から, ヨウ素原子置換体1cBF_2の結晶のみが常温燐光を示した. 興味深いことに, その1cBF_2結晶の発光量子収率は0.25であり, 非常に珍しい高効率な常温燐光結晶であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度ならびに来年度の研究計画の①ハロゲン原子置換体1a-cBF_2の新規合成, ②溶液中における1a-cBF_2の発光特性に対する内部重原子効果および外部重原子効果の評価, ③結晶状態における1a-cBF_2の発光特性の評価をおこない, その詳細な結果を"ハロゲン原子を有するジアロイルメタナートボロンジフロリドの発光特性"というタイトルで日本化学会第94春季年会等にて発表できた.
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