研究課題/領域番号 |
13J10490
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 伸之 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 測定限界 / 輻射圧揺らぎ / 三角共振器 / 光ばね効果 / 重力波 / レーザー干渉計 / 懸架鏡 / 巨視的量子力学 |
研究概要 |
あらゆる測定系は被測定物とプローブから成り立っており、それらの間の相互作用の影響を観測することで様々な情報を取得することが可能となる。干渉計型重力波検出器においては、懸架された鏡は重力波に対するプローブとして働き、その到来に対し位置の変動という応答を示す。他方、懸架鏡は被測定物でもあり、この場合プローブは鏡に照射されるレーザー光である。重力波によって生じる共振器長変動を、鏡で反射した光の位相変動から読み取ることが可能となる。 このような測定には量子雑音限界と呼ばれる測定限界が存在する。本研究では、その一つである量子反作用と呼ばれる測定限界に注目している。これは、鏡で光が反射する際に光の量子揺らぎが鏡に運動量変動を与える事で生じる擾乱のことである。将来の重力波検出器の感度は、この輻射圧揺らぎによって制限されるため、その低減技術の確立が重要な課題となっている。その検証のためには、輻射圧揺らぎによって変動する鏡が必要となるが、巨視系においてそれは実現していなかった。また、量子的反作用は光の量子的な状態を反映するため、これを精密に測定することが出来れば、光と巨視的物体の量子相関を検出することが可能となる。従って、輻射圧揺らぎの影響は低減されるべぎ'雑音'のみならず、巨視的量子力学の検証のための'ベンチマーク'としての側面も併せ持つため、その観測は興味深い。 本年度は、本研究の目標であった輻射圧揺らぎの観測実験を行った。その結果、揺らぎの影響を有意に評価することに成功し、研究のアイディアの優位性を実証した。今後は、当初の計画通り輻射圧揺らぎ観測を通じて可能となる、巨視的振動子を用いた量子力学の検証実験を目指して実験をより洗練させる。そのため、昨年度の研究で判明した問題点 : (1)鏡の懸架手法から生じる機械損失の増大、(2)真空装置内における脱ガスによる懸架鏡の励起、の解消が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた、輻射圧揺らぎの影響を評価することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
上述の問題点を解消するために、(1)機械損失が小さくなることが見込まれる材質の利用、及びその評価(例えば、SUS表面を研磨したプレートの利用、融着による鏡とワイヤの接合)、(2)真空槽内部の装置をすべて高真空対応の装置に変更、などの対策を行う。以上の改良点のうち1番目の課題が最も困難であることが予想される。従って、十分に機械損失を低減できなかった場合に備え、振子の低温化による熱雑音の低減も検討する。
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