研究課題/領域番号 |
13J10506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 麦野 東京大学, 総合研究博物館, 特別研究員(PD)
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キーワード | ニホンジカ / 頭骨 / 地理的変異 / 進化 / メゾウェア / 食性復元 / 化石 / リュウキュウジカ |
研究概要 |
研究計画① : 現生の野生ニホンジカ集団を対象とした進化生態学的研究 ①-1)日本全国に生息するニホンジカ集団を対象とした、集団間比較による生態要因と形態の関連性の解明 東京大学総合研究博物館および公立博物館に収蔵されているニホンジカ標本の計測を行った。また各地のニホンジカ生息地の生態・県境データを文献、ならびに地理情報システム(GIS)を利用して収集し、日本全国全31集団について、体重や頭骨サイズと、それに影響すると考えられる生態・環境情報を取りまとめた。データ解析により、体サイズに影響する環境要因と要因間の相互関係を明らかにすることができた。この成果については国際学会で発表し、現在投稿論文を執筆中である。 さらに東北地方に生息するニホンジカ2集団の比較に基づく、歯牙の形態進化についての論文を国際誌に発表した。また現生ニホンジカの集団間比較を行った、自身および他の研究者の先行研究を取りまとめた総説論文を執筆し、国際誌に投稿した。 ①-2)北海道洞爺湖中島に生息するニホンジカ集団を対象とした、形態の時代変化とそのプロセスの解明 洞爺湖中島のニホンジカ集団の頭骨標本が酪農学園大学に保管されており、その標本の現状調査を行い、総計200標本以上の頭骨の計測を行った。また調査捕獲が行われたので、駆除個体の骨格標本作成にも従事した。関連して共同研究者の東京農工大学の梶光一教授を研究代表者とする研究プロジェクトの立ち上げに関わった。 研究計画② : 化石種のリュウキュウジカを対象とした古生態学・古生物学的研究 歯の磨耗様態からリュウキュウジカの食性を復元するため、現生種の基礎データ収集を進めた。現生ニホンジカ集団の比較から、食性と歯の磨耗様態の関連性を明らかにする研究を実施し、その成果を国際誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現生のニホンジカ集団を対象とした研究については、2013年度中に国際誌に論文を2本発表し、さらに論文投稿中、執筆中の研究成果もあり、初年度から成果を上げることができた。また洞爺湖中島のニホンジカ研究については、順調に標本計測を行えた上、自身が研究分担者となり申請していた科研費のプロジェクトが通ったため、さらなる進展が期待できる。 沖縄の化石シカ類を対象とした研究については、歯の磨耗様態から食性復元を行う上で必要となる、現生種のデータの収集に注力した。食性と歯の磨耗様態の関連性を明らかにし、それを国際誌に論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンジカ集団の全国比較に基づく研究は、論文投稿中、執筆中の成果を早急に公表できるように努力する。中島のニホンジカ研究プロジェクトについては、科研費が採択されたため、プロジェクトメンバーと協働して、標本整理作業とデータベース構築を進め、それと並行してさらなる標本計測を行う予定である。2014年度中に歯牙形態の時代変化パターンについての論文を執筆することを当面の目標に置く。 沖縄の化石シカ類の研究プロジェクトについては、すでにデータの取得が終わっている古食性復元の論文を執筆するとともに、あらたに四肢骨などの組織学的研究も進めることを検討している。2014年度は現地発掘調査にも参加することを検討している。
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