研究課題/領域番号 |
13J10519
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今村 聖路 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | サーカディアンリズム / 概日時計 / ストレス応答 / リン酸化 / キナーゼ / 浸透圧 / レドックス / FRET |
研究概要 |
転写・翻訳を介した概日時計の分子発振が約24時間という長い周期を安定に維持するためには、時計タンパク質のリン酸化などによる翻訳後制御が重要な役割を担うことが知られている。本研究においては、細胞への物理化学ストレスやセカンド・メッセンジャーとしての活性酸素種(ROS)シグナルがキナーゼシグナルへと変換され、概日時計を制御する機構の解明を目指す。 細胞外ストレスの一つである高浸透圧刺激を培養細胞に与えると、細胞時計がリセットする。そこで、浸透圧刺激による時計リセットの入力作用点を探るべく、高浸透圧刺激に対する一群の時計遺伝子の応答プロファイルをqRT-PCR法によって解析した。その結果、培養細胞への高浸透圧刺激に応答して時計遺伝子Dec1/2およびE4bp4が30分以内に転写誘導されることを見出した。ここで刺激時間を60分、120分と延ばした場合、高浸透圧中ではこれらの遺伝子応答は観察されなかったが、浸透圧を元に戻すと30分以内には転写誘導が観察された。つまり、時計のリセットは高浸透圧刺激というよりもむしろ浸透圧の変化が引金となる可能性が示唆された。 一方、細胎内のレドックス環境の変化が概日時計に与える影響についても研究を進めた。マウス組織や培養細胞を非還元SDS-PAGEおよびウェスタンブロット解析に供することにより、検出されるバンド易動度の違いからPrxの酸化状態を検出する実験条件を決定した。この条件において様々な時刻に回収したマウス肝臓および培養細胞由来のPrxを検出したところ、その酸化還元状態が時刻依存的に変動する様子が観察された。さらに、細胞内の総和的・生理的なレドックスステータスに応答するFRETプローブセンサーを一過的にマウス培養細胞に発現させ、FRET ratioを測定することにより、細胞内レドックスステータスを検出する実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載したとおり、浸透圧ストレス刺激が細胞時計をリセットすること、またその際に転写誘導される一群の時計遺伝子を同定した。また、細胞内ストレス環境を測定する実験系を複数構築した。
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今後の研究の推進方策 |
浸透圧刺激によって転写誘導される種々の時計遺伝子についてノックダウン・ノックアウトを行い、高浸透圧刺激時の時計リセットの有無を検証する。また、浸透圧刺激によって活性化する生理的なキナーゼシグナルの同定を通して、新規の時計入力経路を探索する。 細胞内レドックス環境を測定する実験系を応用することにより、細胞内レドックスステータスの日周変動の有無を調べる。また、網羅的RNAi実験と組み合わせることにより、レドックスの変動リズムと転写リズムの間の共役メカニズムや、共役を媒介する分子を探索する。
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