研究概要 |
光条件により精巣の形態・機能を劇的に変化させることが可能な鳥類のウズラ(長日繁殖動物)を用い、精巣での様々な性分化因子の発現動態を調べた。 様々な脊椎動物で知見のある性分化因子(液性因子と転写因子)を選択し、長日/短日条件の精巣でRT-PCRによる発現解析を行った。液性因子では、AMHの発現量が最も多く、短日条件で発現量が顕著に増加した。また、転写因子の中で、長日条件と比べて短日条件で発現量が増加したものはSF1, WT1, GATA4, Sox9, Dax1であり、AMHの発現制御に関与するものであった。 次にこれらの因子が精巣のどこで発現しているのかをin situ hybridizationにより調べた。現在までにAMH, Sox9, WT1, SF1について解析を行った。AMH, Sox9, WT1は精細管内の体細胞であるセルトリ細胞で発現していた。SF1はセルトリ細胞に加え、ライディッヒ細胞にも発現していた。このように、AMHと転写因子はセルトリ細胞で共発現しており、成体の精巣においてAMHの発現制御系が機能していることが示唆された。 AMHが属するTGFβsuperfamilyの因子はリガンド特異的なII型受容体と異なるリガンドで共有されるI型受容体に結合することでシグナルを伝達する。そこで次に、AMHの作用部位を調べるため、受容体の発現解析を行った。II型受容体のAMHR2に関しては鳥類で配列情報が存在しなかったため、解析に必要な部分配列の同定を行った。AMHR2は精巣と卵巣特異的に発現していた。AMHR2もAMHと同様、短日条件の精巣で高い発現を示し、セルトリ細胞で発現していた。また、AMHのI型受容体の候補であるALK2, ALK3, ALK6も短日条件の精巣で高い発現を示した。これらの結果から、精巣機能の制御にAMHシグナル系がはたらいている可能性が示唆された。
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