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2013 年度 実績報告書

サメはなぜ発生初期に海水環境を克服できるのか:卵黄嚢上皮から胚体への機能シフト

研究課題

研究課題/領域番号 13J10542
研究機関東京大学

研究代表者

高木 亙  東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード尿素合成 / 軟骨魚類 / 卵黄嚢上皮 / カルバモイルリン酸合成酵素(CPSIII)
研究概要

海産の軟骨魚類にとって、尿素は体液浸透圧のホメオスタシス維持に重要な物質である。本研究では、軟骨魚類の発生初期の胚がどのようにして体液尿素濃度を一定に保っているのか、その機構の解明を目的としている。本年度は、卵生軟骨魚ゾウギンザメの発生中の胚を用いて、種々の尿素回路酵素の遺伝子発現量の動態を解析し、発生の初期には卵黄嚢上皮(YSM)が主要な尿素合成器官として働くことを明らかにした。また、胚組織(主に肝臓)の形成に伴い、尿素合成の場がYSMから肝臓へと移行する可能性も示唆された。以上の成果は国内で学会発表を行い、論文としても報告している。また、同じ卵生種のトラザメの胚を用いて行った研究からも、同様の結果が得られており、YSMから胚体への尿素合成機能が移行する現象は卵生軟骨魚類に共通のものであることが示唆された。
申請者はトラザメのYSMに対して、トランスクリプトーム解析を行っており、YSMにおけるいくつかの興味深い遺伝子の発現を明らかにしている。特に注目している分子には、YSMの外胚葉由来の細胞層に強く発現している糖質コルチコイド受容体(GR)が挙げられる。他の脊椎動物を用いた先行研究では「糖質コルチコイドがGRを介して上皮細胞の物質透過性を低下させる」という報告があり、トラザメYSMでも同じ作用が見られるかをGRのアゴニスト・アンタゴニストを用いて明らかにする。物質透過性には密着結合(TJ)を構成するTJタンパクが関わっており、膜透過性に影響があるかどうかは、ウッシングチャンバーによる経上皮抵抗値の測定や、TJタンパクの遺伝子発現解析によって明らかにしていく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究開始当初に想定していた卵黄嚢上皮の塩分排出能については、確かな証拠が得られていないが、本研究の目的のひとつであった、卵生軟骨魚類の発生過程における尿素合成部位の特定に成功しており、当初の研究計画を全うできると考えている。

今後の研究の推進方策

国内で容易に入手できるトラザメを用いて、肝臓の器官形成と尿康合成能の獲得過程について、さらに詳細な解析を進める予定である。GRの機能解析には組織培養系を用いる予定だが、軟骨魚類の細胞・組織培養方法は報告例が少ないため、申請者自身が培養条件を確立する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Urea-based osmoregulation in the developing embryo of oviparous cartilaginous fish (Callorhinchus milii) : contribution of the extraembryonic yolk sac during the early developmental period2014

    • 著者名/発表者名
      Takagi, l., Kajimura, M., Tanaka, H., Hasegawa, K., Bell, J. D., Toop, T., Donald, J. A. and Hyoda., S.
    • 雑誌名

      Journal of Experimental Biology

      巻: 217 ページ: 1353-1362

    • DOI

      10.1242/jeb.094649

    • 査読あり
  • [学会発表] 卵生軟骨魚類の発生段階における浸透圧調節2013

    • 著者名/発表者名
      高木亙, 田中宏典, 梶村麻紀子, Tohn Donald, Tes TOOP, 兵頭晋
    • 学会等名
      第38回 日本比較内分泌学会大会
    • 発表場所
      宮崎市民プラザ(宮崎)
    • 年月日
      20131024-26

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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