これまでは、アクリルアミド誘導体の一種であるpoly(N-isopropylacrylamide)(pNIPAm)ゲル微粒子が、気水界面に吸着し、配列、そしてその構造を維持したまま基板上に転写され、薄膜を形成するという過程を明らかとしている。しかし、これまでの検討は、上述した化学種のみの現象しか追えていない。そこで、当該年度においては、これまで行ってきた検討をさらに深めるために、pNIPAmだけでなく、まずはNIPAmに見られるアクリルアミド誘導体の骨格に注目し検討を行なってきた。気水界面での各種ゲル微粒子の気液界面吸着能の評価のため、pNIPAmゲル微粒子とpoly(acrylamide)を主な構成要素とした2種類のゲル微粒子分散液の表面張力をWilhelmy法により測定し比較したところ、前者は25 °Cにおける水の表面張力(~72 mN/m)を低下させるが、後者は低下させないということが分かった。両者の構造を比較すると、NIPAmモノマーに見られる両親媒性の構造が、pNIPAmゲル微粒子が気水界面に吸着する一つの要因だということがわかった。さらに検討を深めるため、上述したアクリルアミド誘導体以外の粒子にて検討を進めたところ、モノマーでは水の表面張力を低下させるものの、ゲル微粒子となった際には、水の表面張力を低下させないという結果が得られた。実際に光学顕微鏡により、上述した時も微粒子の挙動を光学顕微鏡により観察すると、気水界面でのブラウン運動の有無が異なることが分かっている。よって以上の結果から、上述した両親媒性の構造だけでなく、水媒体中でのゲル微粒子の形態も、気水界面でのゲル微粒子の挙動に影響を与えているということが新たにわかってきている。
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