一般に、ポリスチレンやシリカといった固体微粒子分散液を乾燥させると、液滴の縁に粒子が堆積し環状の乾燥構造が形成される。一方、Poly(N-isopropylacrylamide)(pNIPAm)ゲル微粒子分散液を乾燥させると、垂らした液滴の中心部分まで比較的一様に粒子が堆積し、垂らした液滴の形を平面上に模った粒子薄膜が形成される。この現象は、手順の簡便さから、汎用的なコーティング技術として期待できるが、上述した乾燥構造に関する主要因は曖昧であった。平成26年度までには、pNIPAmゲル微粒子が乾燥過程中に液滴の気水界面に固定されるという一般的な固体微粒子とは異なる現象を見出し、pNIPAmと構造の似たアクリルアミド誘導体から構成されるゲル微粒子の乾燥過程と比較することで、微粒子を構成する高分子の側鎖に見られる両親媒性が重要であることが示唆された。平成27年度においては、後に粒子を混合し多種多様な集積体を構築していくために、アクリルアミド誘導体から構成されるヒドロゲル微粒子分散液だけでなく、他の両親媒性高分子や、天然高分子等にも視野を広げ、pNIPAmゲル微粒子分散液に見られた乾燥現象の汎用性を実験的に検証した。 一連のゲル微粒子分散液の乾燥過程の目視および光学顕微鏡観察結果から、ヒドロゲル微粒子の空気/水界面への吸着能は、微粒子を構成するモノマーや高分子が両親媒性を示すことだけでなく、ゲル微粒子が溶媒で膨潤していることが重要であると新たに示唆された。
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