研究課題/領域番号 |
13J10559
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
宮下 脩平 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 特別研究員(PD)
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キーワード | 数理モデル / ウイルス進化機構 / ウイルス複製機構 |
研究概要 |
本研究では、トマトモザイクウイルス(ToMV)のもつ複製タンパク質遺伝子、細胞間移行タンパク質遺伝子、外被タンパク質遺伝子のそれぞれに対して、生活環のどの段階で、どのような仕組みで選択圧がかかっているかを明らかにし、選択を撹乱することを目指している。これにより、ウイルス集団に変異体を蓄積させて弱体化させる手法の確立を狙う。本年度は、主に以下の3つの課題に取り組んだ。(1)複製タンパク質遺伝子が翻訳鋳型となったウイルスゲノムRNAに対してcisに機能する現象について、詳細な解析を行った。その結果、2種類の複製タンパク質(130Kおよび130Kのストップコドンの読みすごしによって生じる180K)のうち、130Kは完全にcisに機能すること、180Kはtransに機能しうるが少なくとも感染初期はcisに機能していることが明らかになった。これにより、ウイルスは細胞内での複製の段階で複製タンパク質の選択を可能にしていると考えられた。(2)細胞間移行タンパク質の選択は、細胞間移行後に感染を成立させるウイルスゲノム数(細胞感染ゲノム数)が小さいことにより可能となっていると考えられる(タバコで感染ゲノム数は4程度)。そこで、細胞感染ゲノム数が撹乱される宿主植物を形質転換体タバコやタバコ近縁種から探索したところ、細胞感染ゲノム数が大きい値をとる近縁種を見出すことができた。今後、この植物においてウイルスゲノムへの変異蓄積の解析を行い、細胞感染ゲノム数撹乱の選択への影響について検討する。(3)外被タンパク質遺伝子の選択は、葉に感染するウイルスゲノム数が小さいことにより可能となっているものと予想された。そこで配列タグを挿入したToMVライブラリーを接種し、上位葉に感染したウイルスのタグ配列を検出して解析した結果、葉に感染するゲノム数は葉によってばらつきがあるが、総じて小さい値をとることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほとんどの研究項目において、計画通りに研究が進んでいるため。また、変異蓄積の解析についてはナノボアシーケンサのリリースが遅れ、また、その性能が予定よりも大幅が低いことが明らかとなったが、これについても代替の実験・解析手法の確立に向けて着実に準備が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに進める。上述の通り、変異蓄積の解析については解析方法を変更するが、研究全体の進め方には大きな影響はない。
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