研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、トマトモザイクウイルスの2つの複製タンパク質(130K、180K)がもつメチルトランスフェラーゼ様ドメイン(MT)・ヘリカーゼ様ドメイン(HEL)・ポリメラーゼ様ドメイン(POL)の活性中心に変異をもつ変異体を複数作製し、プロトプラストおよびin vitroウイルス複製系における相補実験を行った。その結果、180KのPOL機能はin vitro複製系においてはtransに複製に寄与しうるが、プロトプラスト接種時は少なくとも初期にはほぼ完全にcisに寄与すること、マイナス鎖合成あるいはそれ以前の複製複合体形成過程に130KのHEL機能は必須であるが180KのHEL機能は必要でないこと、そのHEL機能はcisにのみ寄与すること、MT機能は130Kか180Kいずれのものもin vitro複製系ではtransに寄与しうるが、プロトプラスト接種時は少なくとも初期にはtransでの寄与が小さいこと、などが昨年度までの結果と合わせて明らかになった。これらの結果から、複製タンパク質遺伝子は少なくとも細胞感染初期にはcisに機能するものとして細胞内レベルで強い選択を受けるものと考えられた。
また、変異率の推定手法の検討を行った。ナノポアシーケンサMinIONの試用プログラムに参加して性能の検討を行ったところ、エラー率が約10%と非常に高く、ウイルス集団の解析には適さないことが明らかになった。一方、2014年に他のグループにより発表されたcircle sequencingによるウイルス変異検出法(Acevedo et al., Nature(2014))についてアルゴリズムを詳細に検討した結果、塩基置換による変異の検出には向くものの、塩基の欠失や挿入の検出には向かないことが明らかになった。このような変異を適切に検出する解析手法を今後検討する必要がある。
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