研究課題
研究の目的 : CAR陽性細胞を指標とした下垂体の幹細胞ニッチの解析下垂体では、多種のホルモン産生細胞が存在しており、これらの細胞は、胎仔原基形成期から成熟後を通じ、幹細胞・未分化細胞から供給され続けることで、生体のホルモンレベルが維持されている。下垂体幹細胞とニッチの同定・解析は、下垂体の発生・維持機構の解明に重要であり、さらに、生体における生命現象を深く理解し、医学などへの応用に貢献することが期待できる。本研究は、新規の因子コクサッキウイルス・アデノウイルス受容体(CAR)を指標として、これまでに複数の幹細胞マーカーを用いて因子の免疫染色により幹細胞・未分化細胞の分布と変化を調べたところ、CAR陽性細胞は下垂体に存在する幹・前駆細胞の一つであり、下垂体発生初期から特定の場所、Marginal Cell Layer (MCL)に集中し、幹細胞ニッチ形成に関与している可能性が示唆され、さらに、形質転換によりEMTを起こし、急激な成長に応じて実質層の幹細胞ニッチを形成し、機能細胞へ供給する可能性が示唆された。一方、CARは胚葉を超えて機能することが確認された。胎仔発生初期から、CARは外・中・内胚葉由来の各組織原基で高発現し、成熟に伴い、一部は成体まで残り続けていた。注目されることは、他の組織の幹細胞ニッチにおいても、CARの発現が確認された。従って、CARは胚葉を超えて、組織の幹細胞ニッチ形成に関与する可能性が考えられる。さらに、CARの生理機能を詳細に理解するために、CAR陽性である下垂体株化細胞Tpit/Eを用いて機能解析を行っている。Matrigelを利用して、組織と類似する高次構造を作らせて培養を行った。その結果、Tpit/Eは自発に中空なシストを形成し、強い極性を示し、ゆっくり増殖しながら未分化性を維持している。さらに免疫組織化学により、生体下垂体実質層に形成される幹細胞ニッチと同様にCARがクラスターの内側に存在した。現時点に、CARを指標としてシストの構造形成における役割とシグナル経路に着目し解析を進んでいる。
2: おおむね順調に進展している
現時点で下垂体におけるCAR陽性細胞の局在と分布変化を解析したところ、新しい視点から下垂体の幹細胞ニッチ形成機構の解明が進めている。そして、CAR陽性細胞の体外培養など機能解析を進めており、下垂体における幹・前駆細胞の正体を明らかにできると考えている。そして、このCARを巡る研究から、下垂体を含めた幹細胞研究に新展開をもたらす。
今年度は、下垂体由来のCAR陽性株化細胞を利用して、機能解析を行っている。CAR siRNA処理によるノックダウンし、細胞接着性、細胞増殖、未分化性などの解析を実施中である。また、高次構造培養により、極性を持つシストの構造形成における役割とシグナル経路に着目し解析を進んでいる。
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Cell and Tissue Research
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10.1007/s00441-014-1861-5
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