研究課題
本年度の研究では、海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」による北極航海や海外の研究機関が海氷上に設置したブイにより取得された観測データを用いて、海氷減少に伴う大気変動やその大気変動がさらに海氷減少を促進していることを明らかにした。「みらい」は、降水の強さや位置を把握できるドップラーレーダーを搭載しており、2013年に海氷縁域で強い降雪を伴う規模の小さい渦を観測した。氷縁付近では、海氷と海洋の温度コントラストにより、対流が強められる大気場が形成され、強い降雪を伴う渦が発生しやすいことがわかった。これらの現象は、多くの研究で用いられている再解析データや衛星データでは捉えることができず、数値実験を用いた理論的研究がほとんどであったが、観測データから初めて存在を明らかにした。海氷上に設置されたブイでは、海氷や海氷の温度、海氷上の雪の厚さを観測している。これらの観測データから、近年海氷上の雪が厚くなる傾向にあることがわかった。海氷上の雪は、海氷が成長する際に大気へ放出される熱を抑制する役割を持っており、海氷の成長量と密接に関係している。海氷上の雪の増加が海氷成長量へ与える影響を定量的に見積もるため、2次元の簡易モデルを用いた数値実験を行った。このモデルの結果から、最近の海氷上の雪の増加により、海氷の成長が約20%抑制され、薄い海氷が形成されやすくなっていることがわかった。薄い海氷の形成は、冬期の強い低気圧により破壊されやすく、夏期に早期融解を引き起こすことから、最近顕著な海氷減少の一因であると考えられる。以上のことから、近年の海氷減少により強い降雪が発生しやすくなり、海氷上の雪が増加して海氷成長が抑制され、さらに海氷減少を引き起こすメソスケールの正のフィードバックが生じていることがわかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Monthly Weather Review
巻: - ページ: -
10.1175/MWR-D-15-0139.1
Environmental Research Letters
10.1088/1748-9326/10/9/094023