研究課題/領域番号 |
13J10606
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
毛 吉 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | グラミシジンA / ペプチド / イオンチャネル / 抗菌活性 / 溶血活性 / ラクタム架橋構造 |
研究概要 |
グラミシジンA (GA)の側鎖の化学的構造修飾による構造安定化の戦略に基づき、4種類の塩橋誘導体および4種類のラクタム架橋誘導体をペプチド固相合成法を用いて合成した。それら合成したペプチド誘導体のモデル脂質二重眼中における構造や機能および抗菌活性、溶血活性や細胞毒性などの生物活性を調べた。CDやNMRを用いた構造確認実験により、ラクタム架橋ペプチドの1種類が、モデル脂質膜中でGAよりも安定なβ^<6.3>-ヘリックス構造を形成していることが示された。機能評価実験では、溶液のpH依存的に蛍光を発する蛍光剤を封入したリポソームを用いることで、合成したペプチドのイオンチャネルとしての機能を測定した。その結果、ラクタム架橋誘導体は、種々の脂質条件においてGAや塩橋誘導体よりも速いイオン透過活性を有することが明らかとなった。生物活性試験においては、まず種々のグラム陽性細菌を用いた抗菌活性試験を行った結果、塩橋誘導体は、ほぼ抗菌活性を示さず、ラクタム架橋誘導体の1種が、GAと同程度の抗菌活性を示した。溶血活性試験では、興味深いことに合成ペプチド誘導体のいずれもGAと比較して顕著に減弱した溶血活性を有することが明らかとなった。また細胞毒性評価試験においても同様に、合成したペプチド誘導体において細胞毒性の低下を確認した。以上の種々の実験からラクタム架橋構造がβ^<6.3>-ヘリックス構造の安定化の作用だけでなくイオンチャネルなどの機能のモジュレーターとしても有用であることが示され、イオンチャネル型抗菌ペプチドの創出へ向けた有望なリード化合物の創製を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に則り、合成や各種機能評価実験など順調に研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は今回明らかにされたペプチド誘導体が示した溶血活性や細胞毒性の低下という興味深い結果の理由を考察すべく研究を推進していく。また合成したペプチド誘導体の1種類がin vitro での抗菌活性を示したことから、動物モデルを用いたin vivoでの治療効果について検証を進め、その結果をもとに構造の最適化をさらに図り、イオンチャネル型抗菌ペプチド薬の創製にむけて研究を進展していく方針である
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