研究課題/領域番号 |
13J10619
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 慶春 東北大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 二国内生的成長モデル / 違法な模倣の摘発活動 / 模倣品の輸入禁止措置 |
研究概要 |
平成25年度は、知的財産の保護を強める政策が各国の経済成長および経済厚生の観点から望ましいものであるかどうかという問題を、国際聞の技術移転を考慮した枠組みで理論的な分析を行った。具体的には、クオリティー・ラダーモデルの内生的成長理論を二国モデルに拡張し、発展途上国における知的財産権を侵害した違法な模倣品に対する摘発活動を導入した。 モデルでは、違法な模倣の摘発活動を強めることは、かえって発展途上国における違法な模倣活動を刺激するケースもあり、それによって先進国におけるイノベーションが阻害される可能性があるということが明らかになった。これは摘発活動をいくら強めても、一向に違法な模倣品の製造が後を絶たず、むしろ模倣の被害にあう外国企業が増えているという現実のデータとも一致する。 また、MATLABを用いたシミュレーションを行い、摘発活動を通じて経済成長および経済厚生を高めるためには、摘発活動は十分な頻度でなければいけないということが明らかになった。この結果を現実に当てはめると、例えば現在の中国では政府機関が摘発活動を行っているが、それによって経済成長を高めるためには、もっと頻繁で激しい活動を行う必要があるという政策インプリケーションに繋がっている。 さらに本研究では発展途上国内での摘発活動だけでなく、先進国における違法な模倣品の輸入禁止措置の効果についても分析を行った。モデルでは、摘発活動と異なり、輸入禁止措置は必ず模倣活動を抑制する効果があるということが明らかになった。日本やアメリカを始め多くの先進国ではそうした商品の輸入の規制を行っているが、その規制によって模倣活動が抑制され国内企業の被害を減らす効果があるということが明らかになり、そうした政策の意義の証明に貢献したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では発展途上国における違法な模倣の摘発活動の効果の分析のみを行う予定であったが、先進国におけるそうした商品の輸入禁止政策の分析にまで踏み込めたことは予定外であった。また、本研究は平成25年度のうちに論文の形にまとめ既に海外雑誌に投稿をしている。そのような進捗具合についても当初の計画以上である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では知的財産の保護政策がイノベーション・経済成長に与える影響についての分析には成功したが、モデルでは技術移転の手段が模倣活動のみに限られていた。こうした単純化は摘発活動の効果を分析するためには非常に簡便なものであったが、現実には海外直接投資やライセンシング、合弁会社の設立など様々な技術移転の手段が存在する。知的財産の保護政策がそうした活動にどのような影響をもたらすかという問題を分析することは非常に意義のあることであり、本研究のモデルを拡張することで試みていく予定である。
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