申請研究では、海馬CA3では、シナプス入力の時空間パターンにもとづいて、樹状突起が多様な情報を処理していると考えている。そこで、海馬CA3錐体細胞は、樹状突起の領域ごとにシナプス入力の時空間的なまとまりの程度を変えることで、多様な情報処理を可能にしているという仮説を立て、申請研究において検証しようと試みている。 本年度においては、シナプス入力の時空間パターンを従来よりも精密に捉えるため、実験手法の開発・改良を行った。申請研究で用いる機能的多スパインカルシウム画像法は、高い時空間解像度を有している。本手法をさらに改良することで、最大で313個という膨大な数のスパインから、最速で2msという短い露光時間の画像取得を可能とした。 現在、取得したデータの予備解析段階だが、シナプ入力が必ずしも細胞体に伝わるわけではないことを示す結果が得られた。この現象は、樹状突起がシナプス入力パターンに基づいて情報処理を行った結果ではないかと考え、今後さらに解析を行っていく予定である。特に、樹状突起による情報処理に重要なシナプス入力の時空間的なまとまりの程度との関連に着目していく。また、樹状突起の領域によってこの現象に差異があれば、樹状突起の領域ごとに情報処理が行われていることを示すものであり、樹状突起領域間の違いにも注目し併せて解析を行う。
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