申請研究では、海馬CA3の錐体細胞は、シナプス入力の時空間パターンを情報として読み取り、さらに情報演算を行っていると考えている。特に、海馬CA3の機能は、樹状突起の領域ごとにシナプス入力の時空間的なまとまりの程度を変えることで実行されるという仮説を立て検証している。 本研究において、昨年度に確立した高速機能的多スパインカルシウム画像法とパッチクランプ記録法を組み合わせることで、海馬CA3錐体細胞樹状突起におけるシナプス入力パターンと興奮性シナプス後電流(EPSC)との関係を調べたところ、全てのシナプス入力が細胞体でEPSCとして記録されるわけではないことを発見している。本年度では、同手法を用いてデータ取得・解析を行い、本現象のメカニズムの解明を目指した。申請研究で注目したのは、シナプス入力時の樹状突起スパインヘのカルシウム流入量やスパインの構造、細胞体との距離である。その結果、これらのパラメータと本現象との間に関連はないことがわかった。そのため、本現象がより高次のシナプス入力パターンに依存している可能性があり、次年度において検証する。
|