横紋筋は収縮単位であるサルコメアが規則正しく整った構造をしているが、サルコメアの外側の膜にもサルコメアに対応するような周期的構造が見られる。しかし、横紋筋の膜系とサルコメア収縮系の間の繋がりについてはほとんど明らかにされていない。本研究では、横紋筋サルコメアの弾性タンパク質コネクチン(収縮系)に結合が見られ、機能未知な150kDaタンパク質(150K)の筋細胞膜や筋小胞体膜との関係について解析を行うことで、横紋筋の膜系とサルコメア収縮系間の構造的ネットワークの解明を行うことを目的としている。昨年までの研究で、150Kの基本的な性質(一次構造・局在・結合タンパク質・スプライシングアイソフォーム・抗体作製・骨格筋初代培養細胞内での過剰発現時のサルコメア形成に与える影響など)について明らかにしてきた。本年は、ニワトリ骨格筋初代培養細胞を用いて150KのRNA干渉による抑制実験を行った。しかし、免疫蛍光顕微鏡観察ではサルコメアを構成する主要なタンパク質の局在への影響が見られなかった。骨格筋初代培養細胞は分化過程で他の細胞と融合するため、RNA干渉による抑制効果が打ち消されてしまうためだと考えられる。そこで、心臓研究を専門とする研究室に助教として異動し、マウス心筋の初代培養細胞を使った実験を開始した。心筋細胞における150Kの各種アイソフォームの過剰発現実験では、150Kの局在や細胞形態に様々な影響が観察された。現在、150KのRNA干渉による抑制実験を行うべく準備を進めており、実験結果を得しだい論文として発表する予定である。
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