研究課題/領域番号 |
13J10688
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石川 格靖 静岡県立大学, 大学院薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC2)
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キーワード | コリバクチン / 大腸癌 / 転写因子 / 生合成 |
研究概要 |
研究対象化合物である大腸ガン原因物質コリバクチンの生産菌より、コリバクチン生合成に必要と考えられる遺伝子をすべてBACという人工染色体にクローニングした。続いて、得られた遺伝子をそれぞれ薬剤耐性遺伝子、および複製開始点の異なる3種の大腸菌発現用の発現ベクターへと組むことに成功し、特定の遺伝子を強制的に発現させることを可能にした。これらの発現ベクターはすべて、特異的な配列を認識する制限酵素によって切断し、その大きさを計測することで正確に発現ベクターが構築されていることを確認した。こつぎに、構築した3種の発現ベクターをすべて、化合物生産用に開発された株である大腸菌BAP1株へと導入した。得られた形質転換体を培養し、コリバクチン生合成遺伝子の発現を誘導させようとしたが、形質転換前に比較して新規生産化合物を確認することはできなかった。その原因として本形質転換体の生育が著しく遅いことや、仮にコリバクチンを生産していたとしても、その生産化合物が生産者である形質転換体の生育を阻害していることが推測された。そこで、コリバクチンの生産を確認するべく、文献に従いHeLa細胞を用いた活性試験を行うこととした。その結果、多少ではあるが形質転換前に比較して細胞の核肥大等の特徴的な変化を観測することができた。近年の報告を参考に本結果について考察したところ、コリバクチン生合成遺伝子の発現量が多すぎる点や、発現量のバランスが悪いことが考えられた。そこで、本生合成遺伝子群中に存在する、転写因子ホモログに着目した。転写因子はその周囲にある遺伝子の発現を統制しているものであり、本転写因子の発現を促すことでコリバクチン生産能を覚醒することが可能であると期待した。まず、本転写因子について遺伝子情報より機能を推測すると、本因子はクオラムセンシングに関与するタイプであり、感染者である動物由来の動物ホルモンを感知し、毒性化合物の生産を促すタイプに当てはまることがわかった。そこで、本転写因子の発現および、転写因子の発現と動物ホルモンを添加する実験を行った。その結果、期待とは裏腹に新規化合物の生産を確認することはできなかった。現在、本化合物生産に関与する誘導剤の探索および転写制御に関する調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象化合物であるコリバクチンの巨大な生合成遺伝子群のクローニングに成功し、詳細な遺伝子実験を可能とした。また、本化合物の生産を生物活性試験によって確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
コリバクチン生合成遺伝子群中に存在する転写因子の発現を促すことでコリバクチン生産能を覚醒することが可能であると考えている。本転写因子の適切な強制発現方法の探索、および転写因子に関与する動物ホルモン等の転写誘導剤の探索実験を行っている。これらは近年急速に発展しているバイオインフォマティックを駆使する。コリバクチンの生産量が増加したら、各種分離操作によって単離し、その化学構造を解明する。
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