研究概要 |
平成25年度は、ヒトパラインフルエンザ1型ウイルス(hPIV1)及び3型ウイルス(hPIV3)のシアル酸認識特異性を比較するとともに、このシアル酸認識特異性がhPIV1とhPIV3のヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)糖タンパク質のどのアミノ酸残基に起因するものであるかを調べた。 1, hPIV1とhPIV3のシアル酸認識特異性の比較 【具体的内容】末端シアル酸構造を改変したヒト赤血球(hRBC)を用い、赤血球凝集活性測定法及び赤血球吸着活性測定法により、hPIV1はα2,3型シアル酸を持つhRBCのみに結合し、hPIV3はα2,3型に加え、α2,6型シアル酸を持つhRBCにも結合することを明らかにした。同様に、哺乳細胞へのhPIV1及びhPIV3の感染性を比較したところ、hPIV1はα2,3型シアル酸を持つ細胞のみに感染し、hPIV3はα2,3型に加えα2,6型シアル酸を持つ細胞にも感染した。【意義・重要性】細胞表面上の様々な糖鎖に対し、hPIVIはα2,3型シアル酸のみを、hPIV3はα2,3型とα2,6型シアル酸の両方を感染に利用していることが示唆された。以上の結果を学術論文にまとめ、現在投稿準備中である。 2, hPIV3のHN糖タンパク質においてα2,6型シアル酸への結合性を決定するアミノ酸残基の同定 【具体的内容】HN1とHN3糖タンパク質のシアル酸結合ポケットでは、シアル酸と直接水素結合する8ヶ所のアミノ酸残基は保存されているが、その周辺9ヶ所のアミノ酸残基が異なっていた。変異を導入したHN3糖タンパク質の赤血球吸着活性を測定すると、375番目および408番目のどちらかのアミノ酸残基をHN1タイプのアミノ酸残基に変異させると、HN3糖タンパク質がα2,6型シアル酸への結合性を失うことが明らかとなった。【意義・重要性】HN3糖タンパク質においては、375番目と408番目の2つのアミノ酸残基がシアル酸認識特異性を決定していることが示唆された。以上の結果をポスター形式にまとめ、日本薬学会第134年会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、「2, hPIV3のHN糖タンパク質においてα2,6型シアル酸への結合性を決定するアミノ酸残基の同定」の研究においてさらなる解析を進めるとともに、HN3遺伝子を持ち、かつ2で明らかとなった2つのアミノ酸変異を持つ組換えSeVウイルスを作製し、その感染性、病毒性を評価してゆく。 もしHN3遺伝子を持つ組換えSeVウイルスの作製が困難な場合は、HN1遺伝子を持つ組換kSeVウイルスの作製を試みる。HN3タイプのアミノ酸変異を導入することで、α2,6型シアル酸に結合1生を示す変異型HN1糖タンパク質遺伝子を作製する。この変異型HN1遺伝子を導入した組換えSeVを作製し、その感染性、病毒性を評価してゆく。
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