研究課題
本研究の目的は、イネの種子形を制御する遺伝子の機能の理解に立った分子育種を行い、種子サイズの大型化による収量増加を成すことである。この目的達成のために本研究では、大粒系統を用いた解析と短粒変異体を用いた解析をそれぞれ行い、さらなる遺伝子源の探索を進めた。<大粒系統を基点とする研究>では、極めて大きな種子をつける大粒系統BG23(種子長約10mm)及びLG10(種子長約14mm)を実験材料に、これら大粒系統同士をかけ合わせた交雑集団を用いた遺伝解析(QTL解析)を行い、その種子サイズの差を説明する遺伝子の探索を行った。その結果、新たに種子長に関わる4つの遺伝子座と種子幅に関わる2つの遺伝子座を検出することに成功した。この事は新たな遺伝子源の探索という意味で大きな成果と言える。さらに、遺伝子の機能理解と種子形制御における役割を明らかにするための遺伝背景を極力統一した材料である準同質遺伝子系統(NIL)の作出は、標準的な日本型イネである日本晴を用いて予定通り進められた。<短粒変異体を基点とする研究>では、新奇遺伝子座の短粒変異体srs2、srs4、srs6の遺伝解析が進行中であり、今年度はsrs2については昨年遺伝解析で見出した候補となる遺伝子について形質転換によって、遺伝子の相補性を見る実験の準備を進めている。srs4及びsrs6に関しては、次世代シークエンサーを用いて、迅速に突然変異体の原因遺伝子を同定する方法であるMutMap法を試みたが、遺伝子の特定に至らなかった。そこで、新たな遺伝解析法(QTL-seq法)の準備を進めている。また、これら短粒変異体は他の短粒変異体との交配も行っており、原因遺伝子が同定できた後は、遺伝学的な種子形制御機構のさらなる解明が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
大粒系統を基点とした研究において、これまでの種子形研究では報告されてこなかった新奇性の高い遺伝子座の検出に成功しており、それら遺伝子座を評価するための準同質遺伝子系統の準備もおおよそ順調に進んでいる。短粒変異体を基点とした研究についても、srs2は候補遺伝子が特定できており、相補性検定を行うための形質転換体の準備に関しても着実に進められている。srs4、srs6に関しては、Mutmap法が解析材料の影響により、想定していた結果は得られなかったものの、解決策として別の解析方法を行うための材料の準備はすでに進めている。
大粒系統を基点とした研究について、昨年度問題点となった既知の主要なQTL座の遺伝解析に対する影響を考慮し、新たな解析材料を用いたQTL解析によって、これまで報告のなかった種子形制御に関わる遺伝子座を検出した。今後は染色体組み換え個体を展開し、各遺伝子の単離を試みる。短粒変異体の解析については、srs2は形質転換による相補性検定を行って、候補遺伝子が真に原因遺伝子かどうかを確かめる。srs4とsrs6は、新たにQTL-seq法を用いて遺伝子の特定を目指す。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 112 ページ: 76-81
10.1073/pnas.1421127112