研究課題/領域番号 |
13J10708
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
橋詰 賢 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / ランニング / 障害 / 膝 / 動作分析 |
研究実績の概要 |
1つ目の計画である腸脛靭帯炎発症リスクとなる姿勢評価として,MRI装置を用い,膝の連続断層画像を取得した.膝関節角度一定かつ股関節角度が異なる条件(完全伸展位および屈曲30°)において,大腿骨に対する腸脛靭帯炎の走行方向に差はなかった.よって股関節の角度変化が腸脛靭帯の走行方向に与える影響は少ないことから,これまで膝関節角度変化のみで評価されてきた腸脛靭帯炎発症リスク姿勢は,異なる股関節角度条件にも適用できる可能性が示唆された. 2つ目の実験ではランニング動作時における腸脛靭帯炎発症リスクの評価を行った.1kmあたり6分,5分,4分,3分の速度で走行した際の反射マーカの3次元位置座標を取得した.下腿および大腿に局所座標系を定義し,大腿座標系に対する下腿座標系の相対的な方位から膝関節角度を算出した.接地期における膝関節屈曲角度は走速度の増加に伴い増加し,多くの被験者が1 kmあたり5分もしくは4分の速度以上で膝関節屈曲角度が30°を越えた.接地期における腸脛靭帯炎発症リスクとなる姿勢は,一定の走速度を越えた場合に発生することが示唆された. 3つ目の実験ではMRI装置を用いて股関節周囲筋の解剖学的機能の同定を行った.股関節解剖学的正位と外旋30°において,長および短内転筋のモーメントアームを算出した.長および短内転筋の伸展についてのモーメントアームは,解剖学的正位と比較して外旋30°で大きな値を示した.長距離・長時間のランニングに伴う疲労時において膝割れと称される接地期の股関節外旋が生じることで,膝関節内反が生じ,膝関節外顆による腸脛靭帯への摩擦力が増加する可能性が考えられる.よって長距離・長時間のランニングにより,股関節伸展の主働筋が疲労することで,代償的に股関節外旋によって長および短内転筋を股関節伸展への貢献度を増加させた場合,腸脛靭帯炎発症のリスクが高まると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,主要なランニング障害である腸脛靭帯炎症の発症リスクをバイオメカニクスの手法を用いて評価し,発症リスクを低減させ得る予防法を提示することを目的としている.この目的を達成するために3年間で4つの実験を設定しており,2年終了時点で3つの実験が実施済みであることから,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は残る1つの実験であるランニングに伴う疲労が腸脛靭帯炎症発症リスクにおよぼす影響という課題について実験を進める.長時間のランニングを課した際のランニングフォームおよび下肢筋群の筋活動の継時的な変化を評価することで,疲労によるランニングフォームの変化が腸脛靭帯炎症発症リスクに及ぼす影響を明らかにするとともに,ランニングフォームの変化を導く要因となる筋疲労についても検討する.
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