研究課題/領域番号 |
13J10710
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金丸 雄祐 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ミトコンドリア / ホスファターゼ / ゲノムワイドsiRNAスクリーニング / 膜電位 / 膜内切断 |
研究概要 |
本研究は、「PARLによるPGAM5の膜内切断」を「新たなミトコンドリア内膜電位低下感知システム」としてとらえ、PGAM5切断上流因子のゲノムワイドsiRNAスクリーニングを行い、ロンボイドプロテアーゼPARLの活性制御機構の解明、及びミトコンドリア膜電位センサーの同定によるミトコンドリア膜電位低下ストレス感知システムの解明を目的とする。今までの研究結果から、PGAM5は、ミトコンドリア膜電位低下というストレスに応答し、ミトコンドリア局在型ロンボイドプロテアーゼPARLにより、膜内切断を受けることが明らかとなっている。近年、PGAM5と同様に、様々なミトコンドリア局在分子の切断が、ミトコンドリア膜電位低下に伴って正もしくは負に制御されることが明らかとなってきている。これらの例はいずれもミトコンドリアのストレス応答に関与することが示唆されていることから、ミトコンドリア膜電位低下を感知し適切な応答を導くことは、生体にとって重要なストレス応答のひとつであると考えられる。しかしながら、これまでミトコンドリアの膜電位を感知してシグナルを伝えるメカニズムは不明な点が多い。また、PARLをはじめとするロンボイドプロテアーゼの活性制御機構の詳細はほとんど明らかにされていない。このような知見より、私はミトコンドリア膜電位低下依存的なPGAM5の切断を指標としたゲノムワイドsiRNAスクリーニングを行おうと考えた。本年度の研究成果として、スクリーニングを行うために蛍光顕微鏡で取得した画像の自動解析よるハイコンテントスクリーニング系を完成させた。この系と約1,8000遺伝子のsiRNAライブラリーを用いて各々の遺伝子を網羅的に発現抑制し、PGAM5の膜内切断に影響を与えた因子についてsiRNA一次スクリーニングを行った。これらの結果から、統計的解析をもとに上位数百遺伝子に絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
siRNA一次スクリーニング、及び候補遺伝子の絞り込み、共に当初の計画通り進行しており、最終的な目的達成に向け、おおむね順調に進展していると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
一次スクリーニングにおけるsiRNAのオフターゲットの影響による偽陽性を除くため、複数のsiRNAを用いた二次スクリーニングを行う。ここではRSA rankingと言ったsiRNAのオフターゲットの影響を考慮した統計的手法によって偽陽性の遺伝子を除き、候補をさらに絞り込む。さらにここで、膜電位センサーの候補の絞り込みとして、候補から外すべきである膜電位低下を直接誘導する分子を除くため、ミトコンドリア膜電位をモニターできる試薬を用いて候補をさらに絞り込む。この時点でまだ候補遺伝子が多ければさらにウエスタンブロットなど異なる評価系で三次スクリーニングを行い、最終候補遺伝子を決定する。それらの結果をもとに、候補遺伝子の膜電位低下やPGAM5の切断に対する応答性の検討を行い、PGAM5、PARL、及び他の制御因子との空間的な位置関係を明らかにする。これらの解析によって、ロンボイドプロテアーゼの活性制御モデル、およびミトコンドリア膜電位低下ストレスの認知機構の分子メカニズムの解明に向け推進する。
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