本研究の目的は、rRNA修飾が病原性に寄与するメカニズムの解明である。これまでにrRNA修飾の生理的意義はよくわかっていなかった。我々はこれまでにこrRNA修飾の生理的意義に迫る知見として、rRNAメチル化酵素が細菌の病原性に寄与するという結果を得ている。このメチル化酵素が病原性に寄与するメカニズムの解明により、これまで不明であったrRNA修飾の生理的意義の解明が期待できる。我々はこのメカニズムの理解に向け、活性酸素種に着目した。活性酸素種は、細菌が宿主環境に置いて免疫細胞から受けるストレスであるとともに、リボソームに対するストレスであるため、rRNAメチル化により、細菌の活性酸素種耐性が導かれると考え、これを検証した。その結果、rRNAメチル化酵素の破壊株が酸化ストレス感受性を示したため、rRNAメチル化が酸化ストレス耐性に寄与すると判断した。また、酸化ストレスを除去する薬剤の投与により、rRNAメチル化酵素の破壊株病原性低下はキャンセルされた。以上から、rRNAメチル化酵素は酸化ストレス耐性への寄与を介して病原性に寄与すると判断した。 また、rRNAメチル化が酸化ストレス耐性に寄与するメカニズムの解明にも挑戦している。これまでに、酸化ストレスはRNAを酸化することでRNAの機能の異常を導くことが知られている。この知見から私は、rRNAのメチル化が酸化ストレス存在したに置けるリボソームの構造と機能の維持に寄与すると考えこれを検証した。そしてrRNAが、メチル化を失うと酸化ストレスによる異常な化学修飾を受けやすくなること、並びに酸化ストレスの存在下でメチル化酵素の破壊株において翻訳忠実性の異常が生じる頻度上昇したことを見出した。 以上から私はrRNAメチル化による酸化ストレス存在下におけるリボソームの機能と構造の維持が細菌の病原性に寄与すると判断した。この結果は、rRNAメチル化の生理的意義を解明するとともに細菌の新規病原性発揮機構を解明した。
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