研究課題
本年度、申請者は3次元刺激における数量過大推定現象の特性を実験的に検討、報告した。数量過大推定現象とは、同じ数の構成要素からなる2次元刺激と3次元刺激(立体透明視刺激)を比較すると、3次元刺激の構成要素数が過大に推定される現象である。2次元刺激とは、それぞれの構成要素の両眼視差がゼロの刺激であり、融合すると単一の2次元面が観察される。立体透明視刺激とは、複数の両眼視差をもつ、ランダムドットステレオグラムであり、融合すると同一方向に複数の面(たとえば、2面や3面)が知覚される刺激である。前年度の研究結果に基づき、本年度はなぜ数量過大推定現象が生じるのかについて2つの仮説を検討した。仮説は、遮蔽仮説と見かけの大きさ仮説である。遮蔽仮説とは、奥行きを持った複数の対象の数を判断するとき、視覚系は3次元刺激の前面が後ろの対象を遮蔽し隠している可能性を斟酌するという仮説である。見かけの大きさ仮説とは、視覚系はより大きいと判断される対象(3次元刺激の後面)がより数が多いと判断するという仮説である。これらの仮説を検討するため、3次元刺激の前面と後面の提示される構成要素数の違いが過大推定現象に影響するかを調べた。本年度は2つの心理物理学実験を行った。被験者は、実験1において2次元刺激と3次元刺激の全体の構成要素数を比較し、実験2において2次元刺激と3次元刺激(2面刺激)の前面(あるいは後面)の構成要素数を比較した。実験1と2の結果は、同じ構成要素数の2次元刺激と3次元刺激を比較すると、刺激の構成に関わらず、3次元刺激の構成要素数の方が多く見積もられる現象(数量過大推定現象)を見出した。2面刺激の前面と後面を比べると、後面が過大推定されることがわかった。これらの結果によれば3次元刺激における数量過大推定現象は、視覚系が3次元刺激の前面が後ろの対象を遮蔽し隠している可能性を斟酌した結果である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 77 ページ: 190-206
10.3758/s13414-014-0746-8