卵母細胞は初期発生時、短いポリA鎖をもつmRNAを安定的に貯蔵し、時期特異的にそのポリA鎖を伸長させることで翻訳を活性化する。しかし、短いポリA鎖の維持という点において、その物質的な基盤や分子機構は未だ明らかでない。申請者はこれまでに、未成熟卵mRNAの短いポリA末がU化されていることを見出した。すなわち1)未成熟卵でmRNA3' 末端がU化される2)末端UはポリA鎖を短く維持する3)時期特異的に脱U化酵素が働き、末端Uが除かれる4)ポリA鎖が伸長し翻訳が活性化されることが考えられる。以上の仮説を証明し、新たなポリA鎖伸長調節モデルを構築することが本研究の目的である。本年度は、仮説1)の証明のため、UなしmRNAの合成を行った。従来法では3'末端配列の正確性が約20%であったが、RNA合成方法の最適化の結果、約80%まで向上できた。これを未成熟卵/成熟卵に注射し反応させ、U化/ポリA化の有無を確かめた。未成熟卵で反応させた場合、U化が起きることが期待されたが、U化は起きず、成熟卵で反応させたmRNAはポリA化された。現在は、U化が起きなかった理由として1. 用いた3'側の部分配列では不十分だった。2. U化は未成熟卵の成長過程で起きており、full-grown未成熟卵ではU化しないの2つを挙げ検討を行っている。また本年度は、ヒトデTUTaseを同定した。これまでにmiRNA、siRNA、histone mRNAに対しU化を行うTUTaseが同定されており、これらとの相同分子が、本研究の対象mRNA U化を担う酵素である可能性があった。そこで遺伝学的手法によりヒトデTUTaseを同定した。さらに、これまでにU化を確認していたcyclinB mRNAに加え、cyclinA mRNAのU化を明らかにした。これにより、U化という現象が広くmRNAに対し影響を与えている可能性が示唆された。
|