研究課題
当研究グループでは、樹状細胞における転写因子PU.1の機能解析を行い、PU.1が、MHC classIIやCD80, CD86, TNF-α, IL-12p40といった樹状細胞による適応免疫誘導に関与する因子の発現を正に制御していることを明らかにしてきた。本研究では、これらの結果を踏まえて、siRNAを用いてPU.1をノックダウンすることで樹状細胞の機能を抑え、免疫系の破綻が原因で起こる疾患の治療に応用可能かについて明らかにすることを目的としている。本年度は、樹状細胞におけるPU.1の新たな標的遺伝子を探索した結果、CCR7 (C-C chemokine receptor 7)とOX40L (OX40ligand)を見出した。CCR7は、抗原を取り込んで活性化した樹状細胞上に発現する因子で、末梢から二次リンパ器官への移動に必須であり、T細胞への抗原提示に間接的に関与する。一方、OX40Lも活性化した樹状細胞上に発現する因子であり、ナイーブT細胞上に発現するOX40と相互作用することで、ヘルパーT細胞、特にTh2やTh9といったアレルギー疾患との関連が深いものへの分化に関与することが報告されている。これまでPU.1は、樹状細胞による炎症誘導に強く関与していることが示唆されてきたが、PU.1がOX40Lの発現を正に制御していることが明らかになったことで、アレルギー反応の誘導にも関与していることが示唆された。従って、樹状細胞においてPU.1をノックダウンすることが、ナイーブT細胞のTh2やTh9への分化を抑制し、アレルギー応答を抑制することが可能であると想定できる。この結果は、今後、アレルギー疾患モデルマウスへのDCpu.1kdを導入する実験を行う上で、非常に重要である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、受け入れ研究者の異動に伴い研究環境が大幅に変わった為、当初の研究計画通りに進まない部分が出てしまった。しかしながら、研究環境を早めに整え、遅れを最小限にとどめたことで、難しい状況を脱し、一定の成果を挙げられたと思われる。
DCpu. 1kdをマウス脾臓由来のnaiveCD4 +T細胞と共培養して、Foxp3 +TregあるいはIL-10産生Tr-1が誘導されるかについて検討する。また、DCpu. 1kdの疾患治療への応用を目指して、自己免疫疾患モデルやアレルギー疾患モデル動物の作製にも取り掛かる。
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Journal of Immunology
巻: 192 ページ: 3936-46
10.4049