研究課題/領域番号 |
13J10799
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岡 和 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 植物ホルモン / 細胞内酸化還元 / 植物病理学 / 微生物植物間相互作用 |
研究概要 |
植物は一般的に、寄生菌に対してはサリチル酸(SA)を、腐生菌や昆虫による食害にはジャスモン酸(JA)を介した防御応答を誘導する。しかし、その制御因子と分子機構の大部分は不明であるため、クロストークを制御する因子の同定及びその機能解析を目的とした。これまでの結果から、SA/JAシグナルの選択的活性化には、細胞内酸化還元状態(レドックス)の変動とSAシグナルの鍵転写補助因子であるNPR1が関与することが示唆されており、NPR1を安定化するレドックス因子としてグルタチオン(GSH)を同定した。 GSH合成酵素であるpad2変異体では、顕著にSAシグナルが抑制されることから、現在、pad2 ; npr1植物を用いて、GSHによるSAシグナルの活性化がNPR1依存的であることをqRT-PCRにて解析中である。また、GSHによる抵抗性誘導はSA合成を介して生じている可能性が考えられるため、NahG植物及びNahG ; npr1植物に対しGSHを処理し、NPR1依存的な抵抗性反応が誘導されるかを確認する。 JAはGSH量を減少させ、その結果としてNPR1の活性化を抑制することを見出した。一方、JA処理によってGSH合成系遺伝子の顕著な抑制は認められないため、未知のGSH分解酵素の活性化が生じるのではないかと考え、その同定を試みた。その結果、細胞質型の新奇GSH分解酵素を同定した。本酵素群の一部はJA応答性を示す一方で、SAには非感受性であるためSA/JAシグナルの選択的活性化において重要な役割を担っていると考えられる。現在、同GSH分解酵素の変異体及び過剰発現体を作出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子組換え植物による検討は遅れているが、SAシグナルにはグルタチオンの蓄積が重要であることを明らかにした。また、JAによりグルタチオン分解酵素が高発現し、細胞内レドックスが変動することで、NPR1の活性化を抑制することが明らかになった。以上の成果は顕著な発見であり、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
作出した遺伝子組換え植物を用いた解析を進める。さらに、グルタチオン分解酵素が抵抗性誘導に与える影響について検討するために、2重及び3重変異体及び過剰発現体を作出し、病原菌及び非病原菌を用いた接種試験を行う。グルタチオンがどのようにNPR1依存的な遺伝子発現機構を活性化するかは不明であるので、上記組換え植物におけるNPRIの活性化を寄生菌や腐生菌接種し、ウエスタンブロットで調査する。
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