研究課題
植物は一般的に、絶対寄生菌に対してはサリチル酸(SA)を、腐生菌や昆虫による食害にはジャスモン酸(JA)を介した防御応答を誘導するが、両抵抗性反応は互いに拮抗的に作用する。SAとJAの拮抗反応の制御因子と分子機構の大部分は不明であるため、クロストークを制御する因子の同定及びその機能解析を目的とした。これまでの結果からSA/JAシグナルの選択的活性化には細胞内酸化還元因子であるグルタチオンが関与することが示唆されており、特に細胞内タンパク質に対するグルタチオン化がSAシグナルの鍵制御因子であるNPR1の活性化に必須であることを見出した。そこで、平成27年度ではグルタチオンによるクロストークの分子メカニズムの解明を目的として、細胞内グルタチオン化レベルの上昇によるNPR1活性化メカニズムのより詳細な理解及び、JAシグナルによるSAシグナル抑制メカニズム解明を試みた。グルタチオンによる抵抗生誘導はSA合成を介して生じている可能性が考えられるため、NahG植物及びNahGnpr1植物に対しグルタチオンを処理し、 NPR1依存的な抵抗生反応が誘導されるかを確認した。その結果、グルタチオンはSA合成を介さずにSAシグナルを活性化することが示された。また、SAシグナルにおいてグルタチオン量が増加するのに対してJAでは減少する。細胞質型グルタチオン分解酵素であるGGCTの2重変異体では、グルタチオン化レベルが上昇するとともに、JAによるSAシグナルの抑制が解除されることから、JAはグルタチオン分解酵素を発現誘導することによりグルタチオン化を抑制、NPR1の活性化を阻害し、その結果としてSAシグナルを抑制することを見出した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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