研究課題
マスト細胞は、アレルギー反応に深く関与する細胞であり、アレルギー疾患の理解と治療には、マスト細胞の機能制御機構の解明が非常に重要である。TIM-4は、細胞膜上に発現する蛋白質であり、死細胞除去やT細胞機能の調節に関与する。しかし、アレルギー4反応におけるTIM-4の役割は明確でない。これまでに申請者は、TIM-4がマスト細胞に結合しサイトカイン産生を亢進させること、既知の結合分子であるLMIR5に加えてTIM-3にも結合することを見いだしている。一方、これら分子にTIM-4が結合した場合の機能は明らかでない。そこで、マスト細胞におけるTIM-4とLMIR5、TIM-3相互作用の機能を解析した。マスト細胞のLMIR5の発現をRNA干渉により低下させると、TIM-4処理によるサイトカイン産生が減弱した。また、LMIR5を欠損したマスト細胞では、野生型の細胞に比べてサイトカイン産生量が低かった。一方、TIM-3遺伝子の発現を低下あるいは欠損させたマスト細胞では、野生型マスト細胞よりもTIM-4処理後のサイトカイン産生量が多かった。また、TIM-3を欠損したマスト細胞をTIM-4で処理した場合のサイトカイン産生は、LMIR5遺伝子の発現をRNA干渉により低下させることで抑制された。したがって、TIM-4はLMIR5と結合してサイトカイン産生を誘導し、TIM-3はTIM-4-LMIR5結合によるサイトカイン産生に対して抑制的に働いていると考えられる。以上より、TIM-4とLMIR5との結合を特異的に阻害することで効率的にマスト細胞の機能を抑えることができる可能性がある。さらに申請者は、可溶型のTIM-4が存在することを見いだした。従来TIM-4は細胞膜上に発現すると考えられていたため可溶型TIM-4の存在意義は不明である。今後は、可溶型TIM-4の生成機構や機能等を調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
予定していた研究課題はほぼ達成することができた。また、マクロファージや破骨細胞にTIM-4が結合した場合の役割も明らかにし、論文として発表することができた。ただし、マスト細胞に関しては、論文発表や特許取得はできていないため、区分②とした。そこに到達できなかったのは、TIM-4には膜型だけでなく可溶型が存在するという、当初の予想を超える結果を得ることができ、さらなる解析が必要となったためである。
申請者は、可溶型のTIM-4も存在することを見いだした。そこで今後は、膜型および可溶型のTIM-4が、各種疾患の新規治療標的や診断マーカーとしてふさわしいか突き止めることを目的として、下記2項目を明らかにする。1)可溶型TIM-4の生成機構および機能膜型TIM-4が切断されて可溶型として遊離されるのか、マスト細胞等のサイトカイン産生を増加させるか調べる。2)ヒトにおいても可溶型TIM-4は存在するかヒトの可溶型TIM-4の測定系を確立させ、健常人と患者サンプルにおける可能型TIM-4レベルを測定する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Immunology
巻: 191巻 ページ: 4562-4572
10.4049/jimmunol.1203035.