研究課題
肥満や糖尿病などの代謝疾患に対して、運動が有益な影響を与えることが明らかにされてきたが、運動によるこれらの疾患の予防・改善に関して、詳細なメカニズムは未だ明らかではない。そこで、本年度は長期的な運動トレーニングが糖代謝を改善するメカニズムを、HSP72発現および抗酸化・抗炎症作用の観点から明らかにすることを目的とした。実験動物には、2型糖尿病を自然発症するOLETFラットおよび遺伝的に近縁な非糖尿病ラットであるLETOラットを用いた。LETOおよびOLETFラットを安静(SED)群および運動(VE)群に群分けした。運動トレーニングとして、回転ホイールによる自発運動を用いた。VE群には、5から25週齢までの20週間自発運動を行わせた。25週齢時に腹腔内糖負荷試験(IPGTT)を行い、耐糖能を評価した。IPGTTの5日後に、麻酔下で血液を採取し、下肢骨格筋を摘出した。ウェスタンブロット法を用いて骨格筋のHSP72発現量を分析した。その結果、OLETFラットの耐糖能は、20週間の自発運動により、有意に改善した。しかしながら、VE群の骨格筋におけるHSP72発現量は自発運動により変化しなかった。このことから、自発運動トレーニングにおける糖代謝の改善において、HSP72以外のメカニズムが関与している可能性が示唆された。次に、近年インスリン抵抗性の惹起に関与することが報告されてきたタンパク質のS-ニトロソ化修飾に着目して、運動の効果を検討した。上述の実験モデルを用いて、骨格筋および肝臓のS-ニトロソ化Aktを分析した。OLETFラットのSED群の骨格筋および肝臓において、iNOS発現量およびS-ニトロソ化AktはLETOラットと比較して有意に高値を示したが、自発運動により有意に減少した。これらの結果から、自発運動トレーニングによる糖代謝の改善には、骨格筋および肝臓におけるiNOS発現およびS-ニトロソ化Aktの抑制が関与していることが明らかにされた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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